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※日下部視点です。
「………。」
へぇ…、と男は面白がるように口角をつりあげた。
「お前のような堅物が、興味本位で首を突っ込んでくるとは、珍しいな。」
居心地の悪い視線に曝されながらも、私は無言で男を見た。
どんなに揶揄されようと、今更言葉を取り消す気は無い。
取り乱す事無く無表情な私を、これ以上からかう気は無いらしく、男は何かを思い返すように、虚空を見上げた。
愉しげに眇められた瞳を見て、私の過去の記憶が呼び覚まされる。
ああ、そうだ。
いつだかにも、この瞳を、私は見た。
あれは、そう遠くない昔。
常人が望んでも得られない多くのものを手にし、不満なんて何も無いような人生を歩みながらも、
何にも執着せず、
全てを見下し、
孤高の玉座で、ただ過ぎ行く時を傍観していた様な男が、
酷く、餓えた瞳で、
それでも、愉しそうに笑っていた。
あれは――、
「…命を、」
「…………?」
怪訝そうに見る私に、男は喉を鳴らして哂う。
「…命を救われた、と言ったら、お前は信じるか?」
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