小説
繋がる体温(現代幸村)
今日は、幸村とデートの日。
さっきから待ち合わせ場所で待ってるんだけど、来ない。
あの幸村が遅刻とか珍しいな〜と考えてたら、向こうから凄い勢いで走って来る幸村が見えた。
そんなに焦んなくても良いのに…。
『ふふっ』
つい笑みがこぼれる。
『っ蓮見殿!!すまぬ!そ、某、遅れて……!!!』
ぜーはーと息を荒くして、それだけ云うと、ただひたすら頭を下げる幸村。
『別に大丈夫だよー。あたしも今来たとこだし』
本当は、30分待ったけど。
『蓮見殿!!本当に申し訳無い!!しかし、某の気が済まぬ!叱って下されぇぇぇ!』
『ちょっ、叱れる訳無いでしょ!ってか、声大き過ぎ…!』
周りの人にくすくす笑われてちょっと恥ずかしい。
いつまでも、頭を上げない幸村を宥めてるうちに、あたし頭ん中に名案が浮かんだ。
『ね、幸村。』
『何でござろう!?』
とようやく頭を上げる幸村。
『叱る代わりにさ、今日は手、繋いでくれる?』
あらら…。幸村、みるみる顔が赤くなって行く。
『なっ!!蓮見殿!!!はれんちでござる!!!』
やっぱこの反応か。
分かっていたけど、いつもこの調子じゃあたしも流石にイラッとする。
『また、はれんち!
あっそ。幸村の気持ちは分かった。あたし帰るね』
『なっ!蓮見殿!?』
くるりと踵を反し、駅へ向かう。
後ろで何か云ってる声がするけど、振り向いてなんかやるもんか。
ずんずん歩いて行くあたし。
『蓮見殿!!待って下され!!!』
追っ掛けて来たらしい幸村の声がすぐ後ろでした。
と同時に右手にふわっと体温が伝わった。
その右手に目をやると、幸村の左手がしっかと繋がれて居た。
びっくりして幸村を見る。
そこには、これ以上無い位に顔を赤くした幸村。
『こ、これで善いでござるか…?』
全くもう!
何処までも可愛いな!
君は!!
あたしは、気付いたら空いてる左手で幸村の頭をわっしゃわっしゃ撫で回して居た。
『くっ、蓮見殿?!どうしたでござるかぁっ!』
『可愛い事するじゃない!もう、この手離さないよ!!』
一生懸命な、君に心奪われる。
いつも。
シャイな君と、ゆっくり歩いて行こうと、繋がれた体温を感じながら思った。
『今までの分はチャラにしてあげる。
けど…次遅刻したら、ちゅーね』
『かかか勘弁して下されっ!!!///』
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