アベミハ大学生シリーズ 10) 頭が真っ白になる。 なんだ?どうしたんだ? なんでこんなメール………。 誤送信、と思いたい。 何も言いたくないくらい怒ってんのか? 呆れたのか? もう、これで終わりにしたいってことか? 悪い未来予想図ばかり、頭の中に展開される。 帰りが遅くなっただけじゃねェか。 明日はずっと一緒にいられるって言っただろ? 今日、何か特別な日だったのか? 「早く降りたら?」 「え?……あ…」 気がつけば、車は既にアパートの前に停められていた。 先程、自分の世界に浸り過ぎだと反省したばかりなのに、舌の根の乾かぬ内に自分の醜態を再び曝すことになろうとは。 ダメだ、本気でこの人とは距離をおこう………。 「…ども。 てか、なんでオレのアパート知ってんですか?!」 木田は呆れたように溜め息をついた。 「以前に練習試合の後、先輩の車で何人か乗せてそれぞれの家まで送ってあげた時、君もいたでしょ。」 そだっけ………? 「ホント自意識過剰だね、阿部隆也君」 ああ、また墓穴を掘ってしまった…。 言葉を発すれば発するほど、立場を悪くしている。 しかし、今はここで落ちている場合ではない。 ちゃんと確かめなきゃいけないことが、やらなきゃいけないことがある。 「どんなメールもらったか知らないけれど、多分まだ大丈夫よ」 この人、何の根拠があって…。 「独り暮らしのはずの君の部屋、明かりが付いてるからね」 車から出て自分の部屋を見上げると、カーテン越しに明かりが見えた。 窓も開けている。 三橋はまだいる―。 全身の力が抜けるような気がした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |