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アベミハ大学生シリーズ
11)
「早く行ってあげたら?待ち人のために。
君はちょっと痛い目を見たほうがいい気がするけど、あっちは何となく可哀相だもん」

「今日のあんた、人に干渉しすぎだと思うんスけど」


負けそうな気がしても、三橋が気になって仕方がなくても、どうしても言わずに居れなかった。
いつもと違う歯車の噛み合い方、時間の澱み方、溜まるフラストレーション。
全てがこの人のせいではなくても、大半はそうだと思ったから。


「ふふっ、ここまでやったのはちょっとあからさまだったわね」


どんな状況になっても、彼女の笑顔は変わらない。


「ごめんね。
君の昼間の電話、本当はちょっと聞いちゃった」


オレ、聞かれてマズイことは喋ってなかったよな?!

平静を装いながらも、心の中は記憶を引っ張り出すのに大忙しだ。


「約束破ったみたいなのに、君は一言も謝らないんだもの。
電話の向こうの人に同情したの」


ふうん、だから―。


「だから連れ出してあげた代わりに、君には嫌がらせをしてたって訳。
―以上!
さ、もう行きなさい。
本当に逃げられちゃうかもよ」


彼女は再び悪戯っぽい笑みをオレに向けた。
しかし、それは先ほどとは違って拒絶しているような笑顔。
これ以上の追及は無理だと悟る。
でも、これだけは伝えておこう。


「オレも、余計な干渉かもですけど」

「?」

「あんま下手な嘘、つかないほうが良いですよ」


それじゃ、とだけ言ってオレは振り返らずアパートへと向かった。


オレが気づいた彼女の嘘。
ひとつは、あの車は彼女の所有物であること。
男の使い方ではない車内の様子で、何となく分かった。
もう一つは、オレが自意識過剰というのは半分外れているってこと。
アパートの場所は知っていても部屋がどこまでかは本来なら知るはずがない。

どうして嘘をついたのか、なんて聞く気はなかった。
ただ、オレと三橋の関係にまで気づいていやしないかと、それだけが不安だった。
だから、もう少し鎌をかけてみたかったのだが…。


もう、そんなことはどうでもいい。
今は、三橋のことを考えたい。

三橋から届いた空メールを思い出し、携帯を再び開く。
あれからメールは届かないから、誤送信とはもう考えていない。
胸が痛い。
このメールにたくさん大切なことが書かれているような気がするのに、オレには全く解読できない。


早く三橋の顔が見たい気持ちとは裏腹に、足取りは重く、空メールを見つめ続けた。




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あきゅろす。
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