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こねことおおかみ/完結

1−Cのクラスメイトは
一人残らず絶賛癒され中だった





簡潔な自己紹介の後、凛はちょこんと自分の席についた。

最初の友達ということで馨の隣の、窓側の後方。
クラスメイトから寄せられる興味津々な視線を気にすることなく

ぽけーっと空を見上げ
時にこねこねと消しゴムのカスで遊び
こくこくと眠そうに頭が揺れていると思えば
最終的にむにゃりと机に突っ伏して眠りについてしまう


凛は顔立ちが特別可愛い!というわけでもなく、馨の言葉を借りるなら平凡である。
しかしひとつひとつの仕草が猫の様で可愛いと、
その日のうちに凛はクラスメイトの愛玩マスコットというポジションを確立したのだった。



「転入早々寝やがった…
 ったく…まぁいい。で、あいつらはまたサボりかー?」

見た目に似合わず堂々としたところがあるのだなと、眠る凛に武下は呆れる。
そしてその後ろの空いた二席を見ながら武下はもう一つため息をこぼした。

「いつになったら真面目に授業を受けるんだか…」

そんな日は来ないであろうことを知りつつも、
担任として無視せずにはいられない。

「また呼び出ししとかねぇとな。じゃ、授業はじめるぞー」



▽▽▽▽▽


「とりあえず寮へ行って寮監に会え。寮への案内は…田原に任せてあるから」

「初耳だけど!」

その日最後の授業が終わり、ぽつんと席に残っていた凛
「帰らないのか?」と馨に聞かれて首を傾げれば、そのまま手を引かれ再び職員室へ行くことになった。

そして同じように武下と友人のやりとりを見守り、馨と寮への道を歩く凛。


「寮へは校舎2階の連絡通路でもつながってるから。凛でも迷わないだろ?」

若干失礼なことを言われているのだが、気にする様子もなく頷く凛。

「寮監のマサルさんはいい人だよ。いっつも競馬ばっか聞いてるしちょっと怖い顔してるけど、まぁ俺らが悪いことさえしなければ優しいかなぁ…あ、寮監室ここね。
 おーぃ、マサルさん!」


ドンドンと音が響くくらい馨が強めにノックする。
しばらくして中からどたどたと足音が聞こえたかと思えば、思いっきりドアが開いた。

「っんだようるせぇな。・・・田原、どうした」

「マサルさんガラ悪いって。転入生の涼宮凛、今日入寮だからって案内してきたんだけど」

「あぁ、お前またタケに使われてんだな」

ククッと笑うマサルに馨はぶすっと口をとがらせる

「そう思うならマサルさんからも言ってくれればいいのに」

「んなことしたらタケに嫌味言われるわ。俺は寮監の秋吉勝。マサルでいいから。よろしく涼宮」

ガタイのいい勝を見上げ、凛の口がぽかんと開く。

「にしても踏み潰しちまいそうなくらいちっせえな。何センチあんだ?」

「ひゃくごじゅう…」
小さいと言われるのは慣れている
だが踏み潰されては叶わない。答えながらもむぅっと頬を膨らませる凛

「ははっ拗ねんなよ、悪かったな」
ガシガシと凛の頭を撫でながら、マサルもまた癒されていた。

「お前の部屋は2015な。鍵はこれ、無くすなよ。どの部屋も二人部屋だから、同室者とは仲良くやること。部屋にキッチンがあるから自炊も出来るし、食堂もあるからまぁそこは自由にな。後の詳しい説明は、田原がするから」

「そうそう俺が…ってお前もかよ!」







「馨ちゃん、元気出して」

なにやら疲れきっている馨の頭をなでなでしながら部屋に向かう凛。

「ありがと凛…ちょっとツッコミし過ぎて…。そうだ、俺の部屋隣だからいつでも遊びに来いよ」

「うん」

凛にとって初めての寮。
想像していたものとは全く異なり、校舎同様豪華な造りになっていた。
廊下には絨毯がひかれ、室温も快適な温度に設定されている。
寮というより、マンションに似ているように思う。

「風呂もトイレも部屋にあるのは贅沢だよな。それに個室だし…金かけ過ぎだよなー」

馨は部屋までの通りで眼に映るものを丁寧に説明してくれた。
学年ごとに階は分かれているらしく、さっき通った共用のスペースでは1年生がのびのびと遊んでいた。

「ここが俺の部屋で、隣が凛の部屋な。えっと同室者は…」
 
ルームプレートの名前を馨は二度見した。

「ゆっ…柚羅…」

自分の隣人が誰なのか、うっかり忘れていたのだ。

<*わんにゃん#>

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