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こねことおおかみ/完結

「そういえば君、見かけない顔だけど…今授業中だろ?こんなとこで何してたんだ?」

ある意味衝撃的な出会いを果たした彼にそう問われ、
凛は自分が目的地を見つけ出せないことを思い出した。


「…職員室…どこ?」

こてりと首をかしげながらつぶやく凛に、少年の不安は更に膨らむ。
彼が誰だかは知らないが、このままにしてはおけない。

それに

「丁度よかった。俺も職員室に行くとこだから一緒に行こう」


幸運にも目的地は一緒だった。








「失礼しまーす」

「遅いぞ田原、何してたお前!俺が呼んだらすぐ来いといつも言っているだろうが」

「ごめんってタケちゃん、でも授業中に呼び出すなんてタブーだろ。何事?」

田原馨(かおる)は、この担任武下に呼び出されていた。

「まぁいい、お前を呼んだのは他でもない。実は今日、転入生が来るはずなんだか待てど暮らせど現れない。もしかしたらどっか迷ってるかもしれんと俺は考えたわけだ。しかしだ、…俺は忙しい。よって田原、お前転入生を探して来い」

どかりと椅子に座った武下が赤ペンを馨に向けている。

「いやいやいやいや、タケちゃん授業中に呼び出しておいてパシる気だったのかよ…いくら平々凡々だと自覚してるオレだって一言言わせてもらうぜ。生徒の権利を主張する!!」


拳を握る馨に、武下は不憫そうな目を向ける。

「田原…平凡を自覚してたのか…」

「いや、そこは否定してタケちゃん。ついでにそんな目で見ないで」

「まぁそんなことはどうでもいいが。授業は免除にしてやるからゴタゴタ言わず探して来い。じゃないと面倒臭…あー、可哀想だろうが転入生」

「ほぼ言っちゃってるし!いろいろひどいし!これは立派なパワハラだぜ…」

馨が頼まれごとをするのはこれが初めてではない。じっとり目を細めて座る担任を見ていると、武下は無精髭に似合わない表情をつくる。

「こんなに優しい俺に・・・お前は薄情な生徒だな。うん、田原サイテーー」

「タケちゃん…教師が泣き真似してる方がなかなか最低だよ…」

黙っていればかっこいい容姿なのだが、この強引さには馨が毎度肩を落とすことになるのだ。

「よし、話もついたとこで」

「いつの間に?」

もうデスクを向いて別の仕事を始めている潔さに馨は愕然とする。
しっし、と追い払うように手の甲が向けられた

怒り混じりに「わかりましたよ!」と返事をする馨の背に「あぁもう一つ」と声がかかる。

「昼休みまでには探して来いよ。こっちにも色々と準備があるから…っておい」

「なんすか」

「……」

「お前、もう見つけてきてたならそう言えよ」

「はぁ?」

振り返る馨に合わせて、背中にへばりついていた凛もくるりと移動する。

先ほどのやり取りの間、小さな凛はひっそりと気配を消しながらずっと馨の後ろにいたのだ。

馨が背を向けて初めて、武下の目にも凛が映り込むことが出来た。
思っていたよりも凛が小さかったことが原因だと、のちに武下は語る。


「え、この子が転入生なの?」

馨は自分の後ろを指差して驚きつつも、
どうりで見ない顔だと納得する

「そういうこと。使える奴だなぁ田原、これからもよろしく頼むよ」

褒めているようで、その言葉にいい予感は微塵もしなかった…。




<*わんにゃん#>

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あきゅろす。
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