こねことおおかみ/完結
2
「あ、みゃーこさんのおやつ、教室に忘れた。
むーくんちょっと待ってて?取ってくるね」
そう言って近くの教室へと走る凛を見送る。
廊下には取り残された二人の長い影が暗く伸びる
何も話さない宗昭だったが、くすくすと聞こえてきた思い出し笑いのような声に
ふと目線だけをそちらへと移す
それに気づいているのかいないのか、壮一は緩やかな空気のままであるが。
「凛くんは本当に素直でいい子ですね」
「・・・・・・・」
「あんなに純粋な高校生は珍しいです。本当にかわいい」
「・・・・・・・・・・・・」
返事も返さず、反応も示さない宗昭だが壮一は気にせず続ける。
「最近はとても心配でしたけど・・・・いや、これで少し進路の悩みもすっきりしたみたいでよかった。
やっぱり凛くんみたいな子には笑顔で・・・元気でいて欲しいですからね」
「・・・・・進路の悩み・・・・」
告げられた内容に、宗昭は無意識に言葉を発していた。
「えぇ、ほらずっと暗い顔していたでしょう?」
戻ってよかったですね
「っ・・・・お前「むーくんおまたせー」・・・」
「もう忘れ物はありませんか?」
「うん、大丈夫。じゃぁね、せんせ」
・
・
・
宗昭の手を握る凛はぶんぶんと楽しそうにその手を振っている
見上げてくる顔は
宗昭が大好きな凛の笑顔だ
その笑顔が見たかったんだ
やっぱりお前には
笑って傍にいて欲しいから
なんで
それを取り戻したのが
俺じゃなかったんだろうか
<*わんにゃん#>
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