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「別にさっきのままでも良かったのに」

「うるせ、」


尚もシスネが笑っていれば、ザックスは居心地が悪そうにスクワットを始める。
ザックスが多少残念そうに眉をひそめたのを、シスネは見逃さなかった。


「それよりも、なぁシスネ」

「なに?」

「俺、また干されてるのか?」


話を反らすように、ザックスはシスネに向き直る。
それでもスクワットを止めないところがザックスらしいのだが。


「息抜きもいいんじゃない?」

「もう飽きた!よし、こっちから連絡する」


ザックスは傍に置いてあった荷物に手を伸ばそうとする。
しかし、それを制するようにシスネが声をかけた。


「統括ならもういないわよ」

「なに…?」


信じられない事実に、ザックスはピタリと動きを止める。シスネは続けた。


「ラザード統括は行方不明。ホランダーに資金提供をしていたのは彼だったの、会社のお金を横領してね」

「あの、統括が?」

「ホランダーを取り調べ中だから、色々分かってくるはずよ」


まさか、あの統括に限ってそんなことが…。
ザックスは崩れかけていた何かが完全に崩壊するのを感じた。それは周囲に対する信頼とでも言おうか。裏切られたショックに似ていた。



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