ページ:4 「別にさっきのままでも良かったのに」 「うるせ、」 尚もシスネが笑っていれば、ザックスは居心地が悪そうにスクワットを始める。 ザックスが多少残念そうに眉をひそめたのを、シスネは見逃さなかった。 「それよりも、なぁシスネ」 「なに?」 「俺、また干されてるのか?」 話を反らすように、ザックスはシスネに向き直る。 それでもスクワットを止めないところがザックスらしいのだが。 「息抜きもいいんじゃない?」 「もう飽きた!よし、こっちから連絡する」 ザックスは傍に置いてあった荷物に手を伸ばそうとする。 しかし、それを制するようにシスネが声をかけた。 「統括ならもういないわよ」 「なに…?」 信じられない事実に、ザックスはピタリと動きを止める。シスネは続けた。 「ラザード統括は行方不明。ホランダーに資金提供をしていたのは彼だったの、会社のお金を横領してね」 「あの、統括が?」 「ホランダーを取り調べ中だから、色々分かってくるはずよ」 まさか、あの統括に限ってそんなことが…。 ザックスは崩れかけていた何かが完全に崩壊するのを感じた。それは周囲に対する信頼とでも言おうか。裏切られたショックに似ていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |