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玄関からゆっくりと近づいてくるのは、知っているようで知らない奇妙な気配。
ナマエはソファから起き上がり、コトッと写真立てをもとの場所に戻す。
そしてその気配のほうへと、足が自然に向いた。

ギィ…
玄関につながるリビングのドアを開ければ、その気配は一層色濃く立ち込める。
そこには、久方ぶりに見る待ちわびた人がいた。

「ザックス…」

ザックスは何も言わず、そこに佇んでいた。
ザックスだと分かった途端に、無意識に起こっていた緊張を解いてナマエはホッと息をついた。
しかし、その安堵もつかの間だった。

「ノックもなしに入ってくるなって、何回言えば分かるのよ」
「…。」
「ザックス?」

いつもならこの手の言い方にくいついてくるザックス。
しかし今日は口さえも開かない。
ナマエは不審に思い、ザックスに手を伸ばす。

「ねぇ、ザック」
「呼ぶな」


ダンッ!!




一瞬、意識を飛ばすかと思った。
大きな衝撃の後に、遅れて痛みが体中を走り抜ける。



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