* 玄関からゆっくりと近づいてくるのは、知っているようで知らない奇妙な気配。 ナマエはソファから起き上がり、コトッと写真立てをもとの場所に戻す。 そしてその気配のほうへと、足が自然に向いた。 ギィ… 玄関につながるリビングのドアを開ければ、その気配は一層色濃く立ち込める。 そこには、久方ぶりに見る待ちわびた人がいた。 「ザックス…」 ザックスは何も言わず、そこに佇んでいた。 ザックスだと分かった途端に、無意識に起こっていた緊張を解いてナマエはホッと息をついた。 しかし、その安堵もつかの間だった。 「ノックもなしに入ってくるなって、何回言えば分かるのよ」 「…。」 「ザックス?」 いつもならこの手の言い方にくいついてくるザックス。 しかし今日は口さえも開かない。 ナマエは不審に思い、ザックスに手を伸ばす。 「ねぇ、ザック」 「呼ぶな」 ダンッ!! 一瞬、意識を飛ばすかと思った。 大きな衝撃の後に、遅れて痛みが体中を走り抜ける。 [*前へ][次へ#] [戻る] |