オトモダチ(海藤)
海藤と名乗った一年生はなんとも生真面目な性格で、なにやら平介に私怨を送っていたらしい。
「海藤くん」「‥先輩」
「どうしました?こんな道の隅っこで」
「‥い、いえ‥」
「当分足りないのかな?ほら、飴ちゃんあげるから元気出して」
「あ‥、えっと」
そんなことも知らなかった私は、平介を羨ましそうに見つめる視線に首をかしげていた。彼に興味が沸いたのも手伝って、飴をひとつ、手渡した。
「‥先輩」「ん?」
「先輩は、どうして
‥‥どうしてあんなやつと」
「え?なに?」「‥いえ」
なんとなく、しょんぼりした秋くんを見ているようで、海藤くんのふわふわの髪をサラリと撫でた。吃驚したと言わんばかりに仰け反る海藤くんに私はキョトンとしてしまった。
「海藤くん」「は‥はい!」
「私ね、小華っていうの」
「知って‥ます」
「ならどうして呼んでくれないの?」
「えっ‥?」
「いっそ、みんなみたいにハナって呼んでくれてもいいんだよ?」
「でも‥そ、そんな先輩を」
「どうして?」「どうしてって」
「私と海藤くんは、顔見知りで知人で、‥‥友達になってくれたと思ったんだけどな」
「と、もだち?」「うん」
「でも先輩はあの人の友人で」
「友達にあの人もこの人もないよ、私は海藤くんと友達になりたいんだけどなあ」
「う、あ、そのっ」
「それに、私は友達にしかお菓子を分けないんだよ」
そこまで言って見上げた海藤くんはなんとなく涙目で、あらま後輩の男の子泣かせちゃったかしらと目を丸くした。
「先輩‥‥小華、先輩」
「はい」
「友達になって下さるんですか」
「もちろん!廊下で会えば手を振るし!嫌じゃなければお昼とか一緒してもいいよ」
はじめまして!
友達になりたいって思ったが吉!友達になるのに資格なんか要らないしましてや誰かに止める権利ないもの!
‥‥そう言ったら海藤くんは嬉しそうに笑ってくれた。
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