気付くな、ソレに(not) 「それがラブレターなら応えられない」 平介の珍しく真面目な声色が胸に落ちた。雫のようなモノではなく、1tの重りのような沈みを見せた。 覗き見をしていたわけではない。ただ、ただ、平介を見つけたから彼が教室に入っていくのを見たから、告白だなんて思わなくて、そしたら、冒頭の台詞。 「(‥ばか、みたい)」 屋上の貯水タンクに寝転がる。今日は秋くんも来るし遊ぼうかなとか考えてはいた。早く帰ってお家の手伝いをしてもいいと今考えている。 いつか、いつか平介も佐藤くんも鈴木くんも、秋くんだってお付き合いして結婚して子供ができて‥そこまで考えると、私だけ取り残されたような気分になった。どうしたらこのグルグルから脱け出せるのだろう、いつまでもこんな親友みたいな関係でいられるわけじゃないのに、でも平介の隣に居るオンナノコを想像したら胸が痛んだ。酷く、酷く、この感情は気付いてはいけないのだと警告音が頭に響く。 「(‥今日は全部、投げちゃえ)」 親には平介の家にと平介には親の手伝いをとメールをした。そして向かう先は小さなカフェだ。沈んだ顔をしていたのだろう、カウンター席に座れば顔見知りの店員が苦笑いしていた。 「‥小華ちゃん、それってこ「言わないで」‥まあ、気づかないふりするのも手段だよ」 「だって、駄目なんです、こういうの苦手で‥ただ一緒にいられる時間が幸せなんです」 「いいと思うよ、うん」 「うえぇー佐々木さぁん」 「小華ちゃんが泣いてるの、見たくないし」 「アネキと呼ばせてくださあい」 「おっし!どんときな!礼は和菓子で構わねえ」 「アネキー!」 礼に和菓子でと言う辺りが佐々木さんらしい。 名の要らない感情は殺してしまえばいい あんな台詞をもう二度と聞かないように、次に会えたら笑えるように。 [*前へ][次へ#] |