5927 俺の大好きな君へ 2 幼い頃からのマフィアとしての教育や生活、息を抜く場所があるのかと、心配した時は山ほどある。 その教育の賜物は綱吉を護る先程の行動に滲み出ていた。 綱吉を庇う小さな背中が、いつもより大きく見えた。そしてしっかりと背中に護られたその安心感。 改めてランチを口に運びながら、思っていた疑問を口にする。 「ね、今の子たちどこで知り合ったの?」 どこかのファミリーに属する者には見えなかった。 「学校です」 ああなるほど…確かリボーンが言ってたなあ。 いくらマフィアと言えども、今は教養も必要で、右腕と言われる程なら尚更で、学校にはしっかり通わされているらしい。 「隼人はどんな音楽を聞いたりするのかな」 するりと片手に持ったディスクを抜き取ると、パッケージを眺めた…が、いまいちわからない。 「年代のせいなのかな…わかんないっ悔しいなあ」 本気で悔しがる俺を見て、少しだけ隼人が笑った。 俺は思わずハンバーガーを取り落としそうなくらいびっくりして君を見てしまった。 「俺だって笑ったりはしますよ十代目…」 心外だといいたげな瞳。 「だって隼人はさあ、俺の前じゃ、いつも畏まったりして感情を表に出してくれないだろ」 「それは…」 「それは?」 一瞬躊躇するその後を一言一句聞き漏らさないよう、耳を傾ける。 「こんな俺をファミリーに加えて下さった…尊敬する十代目の前で、あまり餓鬼みたいな事したくなかったんで…」 ほかのボンゴレ幹部の山本や、雲雀、笹川たちが余りに格好良く彼には写っていたらしく、生来の気質も加わって作りあげられたポーカーフェイス…だったようだ。 ぽつりぽつりと自分の事を話す君を愛しく思う。 「俺はね、隼人。さっき俺を護ろうとしてくれた君の背中、すごい頼もしく思えたよ。山本や雲雀さんにも負けてない程。」 隼人の手を握ると優しく微笑む。 「君の手はこんなにもしっかりしてる。たくさん鍛錬を積んだんだね…傷だらけだ…」 だからこそ、君の少ない日常を俺は守りたい。 ほんの僅か友人たちと接していた時の君の顔。 そんな顔をさせてあげられる彼らに、少しだけ嫉妬した。俺も同い年ならあんな風に笑ったり喧嘩したりできただろうか。 考えても仕方ない事なのだけど…。 「十代目…」 「君はまだたくさんの可能性があるんだ…学校も友人も、君を形作る全てに俺は感謝したい気持ちだよ」 ゆっくりと見開かれるサファイアの瞳を見ながら優しく微笑む。 本当に心からそう思うんだよ隼人…。 これから先どれだけ君が、その真っ直ぐな瞳が、歪められてしまう事が起こるかも知れない。 でも全身で俺を慕ってくれている君を俺は必ず護るから、どうか君は何にも染まらずにそのままでいて欲しい。 そしてまた…一緒にここに来よう。 君がその年相応な笑顔を見せてくれるなら、俺は何だって出来るから。 そしていつか 君がもう少し大きくなったら、この気持ちをちゃんと伝えようかな。だからそれまで焦らずに成長して行って欲しい。 君が大好きだから。 終 [*前へ][次へ#] [戻る] |