5927 俺の大好きな君へ また君に会えた 俺の大好きな右腕 「お久しぶりです十代目」 ボンゴレの中枢に暫く不在だった君は、まだ少年の面影の残る姿で現れた。 「お帰り隼人」 君がボンゴレファミリーに入ってくれた時、正直心配だった…。 余りにもこの世界から掛け離れた日常にいた君を、ある日突然リボーンが連れて来た。 イタリアの街で家出して街のゴロツキと争っている所をスカウトしたらしい。(もちろんゴロツキは一瞬でこの無慈悲な家庭教師に排除された) 当時まだ8歳の幼少にも関わらず類い稀な頭脳における戦術を無意識に発揮していた彼を、ボンゴレ最強家庭教師が見逃すはずもなく、ほどなくして彼はボンゴレファミリーの一員となった。 14歳になった今、あの頃と同じなのは、未だ心を開ききっていない君の…まだ醒める事を知らないサファイアグリーンの瞳と俺に対する一歩引いたそのよそよそしさ。 「隼人、一緒にご飯でもどう?」 執務室で書類に目を通していた俺は、それを横に置くと立ち上がって聞いた。 少し逡巡した後彼は、こくりと頷いた。 −あ、これも少し近づいてくれた証拠なのかな。 今までなら、確実に断られていたからだ。 「隼人何食べたい?」 イタリアと言えども、寿司や蕎麦、今や何でもありのご時世で… 「…ハンバーガー…とかですかね」 うん、そこは年相応なんだね。 フフッと笑って、ハンバーガーショップにつき合う事にした。 「ボス、護衛を」 「え?いらないよ。ここに頼れる右腕がいるじゃない」 ニコリと微笑むと隼人を見る。 「では…スーツからお着替えいただければ…目立たないかと」 一理あると思った俺は、外の寒さを思って、フードつきのダウンにカーゴパンツと言うラフな服装に着替え、念のため防弾を下に装備する。 「お待たせ、さあ行こうか」 一部始終を無言で見守っていた彼を振り向くと、少し緊張しているように見えた。 「俺の行きつけの店とかで、いいんですか」 廊下を歩きながら、ぎこちなく聞いてくる。 今更ハンバーガーを後悔してるのか。 「もちろん!君が好きなものだもん案内してくれるよね」 笑顔のまま隼人を見返せば、照れたように目を逸らされる。 案内されたそこは、ごく普通のカフェスタイルのハンバーガーショップで、オープンテラスもある。寒い冬にオープンテラスでランチか右腕くん。 メニューを決めて、それぞれ受け取ると席へと歩きはじめた俺の背後で、微かな殺気を感じる。 瞬間、前を歩いていた隼人が素早く振り返ると、左腕で俺を庇うように背後へと押しやり前方を見据える。 間をおかず、短い嘆息が聞こえると、少し離れた場所で隼人と同い年くらいの少年二人が、何やら隼人に投げつけた。 それを上手に片手で受け取ると、少年たちが声をかけてきた。 「ハヤトー!グラーツィエ!」 俺を庇う仕草を解いて、CD片手に少年たちに何やら文句を言っている。 「この人に当たったらどーすんだ、果たすぞ!」 普段聞かないような声を出してどうやら友人らしい彼らと、軽口をたたきあっている。 「じゃハヤトまたな!そこの美人なヒト今度紹介してくれよ!チャオ!」 「バッ!バカこのヒトはそんなんじゃねぇよっ」 いつものポーカーフェイスは何処へやら、焦った様子で抗議していた。 イタリアに来て、長い俺は軽口をたたき合う彼らの会話は理解できる。 憤る彼の顔を見て、ああ彼も年相応な顔を見せられる友人がいるんだと何故か安心した。 [次へ#] [戻る] |