本棚 旅立ち〜トウヤの場合〜 「ごめんねトウヤ。アタシ行くね」 オレの双子の姉…トウコが、ベッドで横になるオレの顔を心配そうに覗きこむ。 「大丈夫だよ。オレも、後から行くから…」 オレは無理して笑ってトウコを見送った。トウコに心配かけたくないし。 「行っちゃったかぁ…」 今日、トウコが旅に出た。幼なじみのチェレンもベルも一緒に。 「ゲホッえほっ……はぁ。何でオレ風邪引いてんだろう…」 マジ災難。トウコと一緒にいられないなんて。 本当はオレもアララギ博士からポケモンを貰って、トウコと一緒に旅立つはずだった。 でも、今朝だるくて熱計ったら38.2度…ありえないだろコレ。笑えない。 無理して一緒に行こうとしたら、みんな(特にチェレン)に全力で止められた。チェレンめ…アホ毛抜くぞコノヤロウ。 「はぁぁ……。トウコぉぉ」 体が熱い、でも寒気がする。 ガチャッ 「大丈夫なの?ほら、これなら食べられるでしょ?」 母さんがゼリーと薬と水をトレーに載せて部屋に入ってきた。 オレは上半身を起こす。体がいつもより重く感じる。 「食べたら薬を飲んで、大人しく寝てなさい」 「うん」 母さんはトレーをベッドのすぐそばのミニテーブルに乗せ、オレの頭を優しく撫でた。 「ゆっくり休んでね」 そう言って部屋から出て行った。 「…………………」 オレはゼリーとスプーンを取った。 カチャリ スプーンで小さくゼリーをすくって、口に運ぶ。 ゼリーの中には、オレの好きな桃が一口サイズに切られて沢山入っていた。母さんの手作りゼリーだ。 「………冷たい」 キンキンに冷やされたゼリーは、オレの熱を下げてくれるような気がした。コレならどんどん食べられる。 うん。いっぱい寝て早く風邪を治そう。 そして早くトウコに追いついて一緒に旅をするんだ。トウコは世界で一番可愛いから、悪い虫がつく前に追いつかないと。 「……粉薬かぁ」 ゼリーの次に待っていたのは粉薬。薬の味が口に広がるから、苦手なんだよなぁ。 「……………よしっ」 サラサラと薬を口に入れて、水の入ったグラスを掴む。 そしてごくごくと水を一気に飲んだ。 「……………はぁ、苦い」 やっぱり粉薬は苦手だ。 後はさっさと寝よう。 布団をかぶって横になる。 「……………トウコ…」 寂しいな。トウコがいないのは…。 結局次の日もまだ少し熱があって、オレが旅に出たのはそのまた次の日だった。 「いってらっしゃい!無茶はしないのよ」 「わかってるよ母さん。行ってきます!」 おっし!トウコ、すぐ行くからな! 母さんに別れを告げ、博士の研究所に行く。 博士に貰ったポケモンは、チラーミィ。炎・水・草タイプのポケモン達はトウコ達に渡したため、ノーマルタイプのこいつしかもういないらしい。 「これからよろしくな!チラーミィ!」 ボールから出してそう声をかけると、チラーミィは嬉しそうに笑った。すぐに仲良くなれそうだ。 春・一番道路…。 桃色の花びらが舞う季節。 相棒はチラーミィ。 オレの旅は始まった。 -------------------- ここのトウヤくんの設定です。 捏造しかありません(笑) [*前へ][次へ#] [戻る] |