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逆転裁判SS
つぼみ
「あーおもしろかったねぇ!」
「真宵ちゃん、途中興奮しすぎだよ」
「そんなことないよ。みんな一緒に白熱してたじゃない」
「みんなってアレだろ、主に小学生だろ。てゆうか真宵ちゃん、小学生より白熱してたぞ。ポップコーンばらまいてたろ」
「だって『みんなの元気をオレによこせ!!』って言うから、思わず」
「そこだけ言葉汚いんだねトノサマン…」
「まぁまぁ。でも楽しかったでしょ?」
「はいはい」
「なにそのテキトーな返事!あたし知ってるんだから。なるほどくんがトノサマンと捕らわれのカオル姫との密会のシーンでちょっと泣いちゃったのを!!」
「な!なな泣いてなんかないぞぼくは!!」
「異議あり!じゃあなんでちょっと目が赤いんですかー!」
「うっ!ね、寝不足だからです!」
「そんな主張が通用すると思うのか成歩堂!」
「なんで御剣のマネ!?」
「練習したからね!」
「練習したんだ!?」

つぼみ


ぼくたちが晴れて恋人どうしになってしばらくたつ。
クリスマスも近いのに恋人らしい事もしていないのは何かマズイのではないかと、真宵ちゃんを映画に誘ってみたのだが…
「『激突!!最後の決戦トノサマンvsアクダイカーンJr.』ねぇ…」
人混みの中、出口へ向かってゆっくり歩きながら軽くため息をついた。
「なによー」
「ぼくたち一応恋人どうしなんだけど…見に来る映画がコレなのはいかがなものだろう」
「いいじゃない、あたしは楽しいもん。…なるほどくんは楽しくないの?」
「いや、まぁ、楽しいけどさ」
「えへへー。ならいいじゃない」
上目づかいでちょっとしょんぼり聞くなんて反則だよ…。真宵ちゃんの無邪気な笑顔に苦笑する。
大勢の子供と母親に飲まれそうになりながら、わらわらと映画館を出る。
久しぶりの快晴で暖かかった外もいつの間にか日が落ちていて、今は北風がビュンビュン吹き抜けて、ものすごく寒い。
「うわぁ、寒いよなるほどくん!」
「お、今日はちゃんとコート着てきたんだね」
「えへへーさすがに寒くてさ」
「そりゃ装束だけじゃあ寒いだろうね」
暗くなってキラキラとイルミネーションで輝く街を並んで歩く。
「すごいね、キラキラしてて綺麗…」
真宵ちゃんはキョロキョロとそこかしこに飾られたイルミネーションにうっとりしている。
実は事前にこっそり雑誌で調べてイルミネーションが綺麗なスポットを選んだりしたのだ。作戦は成功のようだ。
「真宵ちゃん、あんまりキョロキョロしてると危ないよ」
満足げにたしなめるが、顔がにんまりしてしまっている。
「だって、すっごいキレイなんだもん」
「クリスマスが近いからかな、たくさんあるな」
「ね、すごいなぁ」
通りを歩いていくと大きなショッピングモールへ入る。ここでご飯を食べようと計画しているのだ。
「あ。ねぇねぇ、なるほどくん。あそこ見てもいい?」
「うん?いいよ」
真宵ちゃんがトコトコと小走りで行ったのはショッピングモール内の通りにある、出店のような小さなアクセサリー店。
指輪やピアスが所狭しと並べられていて、何人かの他の客に混ざって真宵ちゃんがうっとりとキラキラした指輪を見ていた。
少し離れてその横顔を見ると、あぁ女の子だな、と思う。
普段トノサマンだのみそラーメンだのと騒いで女を巧妙に隠しているが、キラキラした物や可愛い物に惹かれているその様子を見るとそう感じてしまう。
少女から大人の女性へと少しずつ成長しているのだと。ふくらんだ蕾がふわりと開くように、それは可憐で甘い。
「倉院にはこんなのなかったから、見とれちゃうねぇ」
小さな石のついた指輪を手に取ってうっとりしている真宵ちゃんから、ひょいっと指輪を奪う。
「なるほどくん?」
「買ってあげるよ、これがいいの?」
「え」
「サイズは…うん、合ってるな」
「い、いいよなるほどくん。見てただけだから」
「いいから」
レジへ行って会計し、ついでにタグをとってもらう。真宵ちゃんのところへ戻ると、なんだか赤い顔で固まっている。
「真宵ちゃん?はい、手だして。左手」
「う…うん…」
おずおずと上げた左手をとって、少し冷えた細い薬指に銀色の指輪をはめる。小さな薄ピンク色の石が真宵ちゃんの白い指に映えて、とても可愛い。
「わ…ありがとう…」
「どういたしまして」
少女のような、でも少し大人びたような真っ赤な顔でもじもじ言う真宵ちゃんが可愛くて、そのまま手をとって歩きだす。
寒さで少し冷たくなった手を温めるようにほぐすように、親指でさすりながら手をにぎる。
冷たい風が頬にあたって気持ちいい。多分ぼくも赤くなってるのだろう。
「ご飯、なにがいい?」
なんて、当たり障りのない言葉で何でもない風を装う。
「…みそラーメン」
ぽつりと斜め後ろから声が聞こえた。
そのいつもと変わらない、少女の幼さを残した真宵ちゃんの言葉に、ぼくはこっそり笑う。
「はいはい。じゃあやたぶき屋行こうか」
「うん」
「まったく、まだまだ子供だなぁ」
「む!?何か言った?」
「何でもない何でもない」
ご飯を食べる予定だったおしゃれで大人びたショッピングモールをそのまま抜けて、駅へと向かう。
女の子はどんどん綺麗になっていくから、この子もあっという間に大人びて、それは綺麗な女性になるだろう。
蕾が綻びて花開いてゆく様子を一番隣で見守りたい。
(だから離れないで)
ぎゅっとにぎった真宵ちゃんの手はだんだんぼくの手と同化して同じ体温になった。


《終》


なんだかとりとめのないお話ですが…(*_*)
17〜19才って女の子がどんどん綺麗になる時期だと思います。

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あきゅろす。
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