青春メモランダム
V.
「わかった。」
…慣れてるし、な。
たいてい皆こんな風にしたがるものだ。
張り付いたような笑顔を振り撒く俺に羽鳥は顔を赤くして笑った。
…―胸が少し温かくなったけれど、必死に押さえ込んだ。
…俺は飽き性だから。
自分は最低だ、って思ってはいるさ。…けど、しょーがねぇじゃねーかよ。それが"俺"なんだから。
こいつだってすぐ飽きるのだろう。どーせそれでフラれるなら…
"本気の恋"なんてしなきゃいーんだよ。
それから俺は友達の昼飯の誘いを丁重に断り、羽鳥と一緒に屋上へと向かったのだった。
キィ―…
扉を開くと気持ち悪いほどの快晴。屈折した俺には強すぎるほどの太陽に自然と眉が寄った。
「ここで、いい?」
不安げに聞いてくる羽鳥にニッコリと笑って頷いた。…表情筋が痛い。
作り笑いをしすぎたと自分の頬を撫でているとおずおずと重箱が差し出された。
羽鳥に何コレ?と視線を遣ると、顔を伏せながら小さな声で
「…あの、これ作ったんで……そのっ、食べて下さいっ。」
…
……
「プッ…」
「へぁっ!?」
思わず笑いが漏れてしまった。…しかもその後の羽鳥の素っ頓狂な声にもこれまた笑えた。
俺が必死に笑いを堪えていると、羽鳥がおろおろしだした。少し可哀相だったので理由を教えてやった。
「重箱って…いくらなんでも一人では食べらんないよ。」
「あっ…。」
今気付いた、というような反応に苦笑いがこぼれる。
「ごめん…なさい。」
「いいよ。…じゃあ一緒に食べる?」
「っ!!は、はい!!」
俺達は一緒に重箱に詰められたお弁当を食べた。
何故"一緒"なんて言ったのか、…自分が分からない。
だけど
時間が無くて食べ終わらなかったお弁当はこれから残さずに食べようと思った。
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