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02
 


「あんま意識した事なかったっすけど、バレンタインってホラーなんすか…」
「ある意味ね。でも森君も貰うでしょ?」
「んー…でも別に溢れるほどではないし本能がどうとかって意味で見てなかったから、気にしてなかったっすねー」



 机にべったりと上半身をつけて両手をふらふらさせた幸丸は、「でも」と机に腕を組んでこちらを見た。



「去年ここらへんが異常なまでに賑やかだったのは覚えてるっす」



 指先をぐるりと回しながら、こっち側に向けて思い出したように言った。

 確かに一年の後半と席は同じだ。視界に入る場所だから、去年溢れんばかりにプレゼントを貰っていた事を考えれば目立つのも頷ける。
 特に幼馴染みカップルは何故かお揃いのグラスなど、食べ物ではなく二人が一緒に使える物が多くて余計に嵩張っていたのをよく覚えている。

 中学はチョコレート類のお菓子だったのに、高校では物資になった。金持ちの思考はよく分からん。
 物資の送り主の大半が親衛隊だった事に関してはまあ、ありがたいねって話を幼馴染みはしていたけども。
 ただ一部に18禁物資が紛れ込んでいたから流石に引いた。使えってか。二人に使えって言ってんのかと俺は複雑な気持ちになったね。



「……今年は無いといいな、R指定」
「去年言っておいたから大丈夫だと思うよ?」
「ちょ、R指定ってなんすか」



 そのままの意味だよと微笑む伊織にやはりというか幸丸はドン引きで、小さく「えぇ…」と声を漏らした。
 R指定はやめてね、と言ったらしいけど送り主達にいつ伝えたのかは分からなかったが、多貴も頷いていたし二人は去年だけの奇行だったのだと片付けているようだ。



「お前らのファンはなに考えてんだよ」



 頬杖をついて呆れながら言った瀬戸は、相変わらず俺の右手で遊ぶのが好きらしく片手で撫でたり押したりしていた。
 クラスでは慣れた行為なのでクラスメイトはもう驚いて凝視する事は無くなったけど、他のクラスの生徒からは喫驚の眼差しが送られてくる。
 それくらい瀬戸が誰かと親しくするのが珍しいのか、行動が珍しいのか、でも瀬戸は人気があるからこその視線であることは間違いないわけで。

 最近特に雰囲気が柔らかいし、喋ることも笑う事も増えているからかどうやら更に人気を得ているようだ。
 いやはやイケメンって凄いな。



 

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あきゅろす。
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