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手作りは愛を込めて‐01
 


 ───バレンタイン前日は丁度良く日曜日である。
 この日以外に時間が取れなかったらしい会長に、そういや忙しい人だったなと思い出した。
 何かとやらかしてるから実感無かったけど、生徒会長であり御曹司な五十鈴馨という人は学生でありながら多忙で、家の用事やら生徒会の仕事やらが想像よりも多いようだ。
 あとあの人もうすぐ卒業だったのも思い出した。会長三年生だった。忘れてた。

 卒業となれば進学、就職があるのだからそりゃあ忙しいわ。そんな時期に何してんだあの人。
 会長にとって蒼司と同じ空間に居られる時間は少ないし、卒業前にやっておきたかったのかもしれない。…にしてもバレンタイン以外にもイベントあっただろ。
 何かしらやっていても尽く無駄にしてる気がしなくもない。


 そんな考えで時間が過ぎて、会長より先に瀬戸が家に来た。
 会長にはメールで必要な材料と自宅の住所を伝えてある。いくらお坊ちゃんと言えど、買い出しくらいは出来てもらわないと困る。



「何作るんだ?」
「んー、なるべく初心者向きで、って思ってんだけど、俺も菓子類はそんなに作ったことがないから無難にチョコチップクッキーと型チョコ」
「型チョコ?」



 器具を出しながら答えると、カウンターの向こうで興味深そうにそれを眺める瀬戸が眉を寄せて軽く首を捻った。何その仕草かわいい。



「溶かしたチョコを型に流して冷やすだけの簡単なお仕事のやつ」
「あぁ…」
「ただそれだとつまらないから、チョコはカカオ率高い苦めのやつにして、中にフルーツソースとかナッツ、ドライフルーツも入れようかなって」
「…どうやって入れんだ」
「説明するの難しいんだよなぁ…見てれば分かるよ」



 ちょっと加減が難しいものの、簡単には変わりない。少し手の込んだクッキーと溶かして流して冷やすだけの簡単なもの、その二種類にしようと決めたのは昨日だ。
 フォンダンショコラも良いなとは思ったけど、一夜置いて渡すものだし加減が難しいのもあってフォンダンは止めた。
 クッキーと型チョコなら、ありがちだけどどちらも冷えていても美味しい。
 マドレーヌやパウンドケーキ類は冷えると固くなったりパサつくと困る。バターとか多めにすれば解消するだろうけど、プロじゃないので難しいところである。

 蒼司はあまり甘いものは好きではないから、どちらもチョコはビター寄りにした。


 


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