03
……なぜこうなる。
じと…、と目の前の白地に赤龍の浴衣を来た不良擬きを睨むように見るが、対象の人間はそれに気付かない。
俺の手にはかき氷。因みにレモン。半分くらい減って、黄色い液体がひたひたになっている。カチワリみたい。旨いけども。
さっきまで一緒にいたはずの三人が見えない。どっか行った。
屋台回って欲しいものを買いに行ったとかそういうんだと思う。思うんだけど、とにかくどっか行ったんだよ。
神社は広くて人が沢山いて、賑わいの中から少し離れた場所に居てもその熱気と賑わいは変わらず。
それくらい、この神社の催す夏祭りは人気だ。
少し距離のある屋台の方に視線が移っていた目を、また目の前の不良擬きに戻す。
たぶん、腕を組むか袖に手を入れてるんだろう。手が見えない。
ちなみに俺は自然に出来た木のイスみたいな所に腰かけてる。安定感はないけど、これは神社の至る所にあったりする。
「……なぜ」
こぼれ出た呟きは当たり前に誰にも届かず消えた。
べつに二人になることに抵抗はない。ないんだよ。いつもなら。
ただ俺は、中学の時ここの夏祭りに蒼司と来たのを思い出して、今年は来ないのかなぁ、とか何となく考えて。
流れに流れて記憶の隅に居たらしい、つい最近の蒼司の言葉を思い出しちゃったわけで。ついでと言わんばかりに、女々しく引きずられてきた六月の羞恥というか気まずい思い出が現れたわけで。
なんで今のタイミングで思い出すかな…。
なんで俺はそんなにあの時のことを気にしてるんだろうな。
もやもやした気持ちがまた浮かんできて、足元に視線が下がる。
ざり、と砂利を踏みにじる音が感覚で聞こえてきて、なんだか居た堪れない。
不意に、瀬戸の影で暗かった前方が屋台などのライトで若干明るくなる。
顔を上げればそこに白い浴衣はおらず、気づけば隣の小振りな岩のような所に座っていて。
「疲れた」
だそうです。
ずっと立ってたしな。
それに返すタイミングを逃し、ただかき氷に目を向けた。もう殆ど溶けてる。
「───俺と二人で居んの、嫌か?」
唐突な問い掛けに、俺は飲み物と化して吸っていたかき氷を器官に引っかけて噎せた。
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