02
「ぶっはー…もう灰になる」
「お疲れさま」
「お疲れ多貴」
まっつんが教室から出ていった瞬間、テスト期間限定の後ろ姿を見せていた多貴が机に突っ伏した。
あーとかうーとか言いながらも元気な感じを見ると、なかなか上出来だったのかもしれない。
「化学のあれマジでやめてほしい」
いつも通りに横向きになった多貴が真顔で言った。
「あの人生徒が苦しむ姿を想像して問題作ってるらしいよ」
「……」
「……」
本当に鬼だったか。
ただでさえレベル高いのに、意図的に更に難易度上げるとかどんだけ鬼なんだ。
多貴と二人で意志疎通した所で、伊織の後ろの席からゴンッと鈍い音が聞こえた。
「……森、力尽きたな」
「大丈夫かー幸丸」
しばらく額を机に合体させてた幸丸に声をかけたら、ゆらりと顔をあげた。
その顔がなんか言い様のない表情で首をかしげたら。
「…オレ、今回の中間、今までで一番解答欄埋められたっす」
半分放心状態で幸丸が呟いた。
え、マジで。
そう思ってたら、急に覚醒したように幸丸が髪をかきむしって歓喜の声を上げる。
「っうわーうわー、なんかもう皆にマジで感謝してるっす!」
「森くん大袈裟だよ」
「よかったなー」
「幸丸今までどんだけ出来なかったの」
「……真横で叫ぶなうるせえ」
「瀬戸冷たいっす!」
「うるせえ叩くな」
興奮冷め遣らぬ幸丸にバシバシ肩を叩かれる瀬戸。なんかおもしろい。
本気で怒ってない瀬戸も、それだけ幸丸を友達だと思ってるってことなんだろうな、となんだか微笑ましくなる。
しかし、ここで伊織が愛らしい笑顔で爆弾を投下した。
「森くんとりあえず落ち着いてね。結果は来週だし、採点して間違ってたらショック大きくなっちゃうよ?」
ビシッと硬直した幸丸。
とりあえず俺は伊織が悪魔に見えた。
たまにわざと空気読まない伊織は腹黒いというか、単純にドSなんだと思う。
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