[携帯モード] [URL送信]

中編
【番外編】佐東亮平の場合。
 

 ───懐かしい面子と盛り上がった同窓会からの連休が明け、出社して親友(腐れ縁ともいう)を見たとき、ピンときた。


 会社では上司だが同窓であり友人の倉科幸宏。
 とにかくヤツは顔が良いのもあってよくモテるが、誰かと付き合ってもあまり長続きしているイメージはない。

 そんなヤツに、遅れた春が来たようだ、と気付いたのはほんの数ヵ月前───懇意にしている会社での合同会議で中学時代の同級生と再会してからだった。


 俺はそいつ───須藤正樹と会話をしたことはないが、当時幸宏からよく話を聞いていた。まあ、その時からこいつは好きなんだろうなと思っていたけど、まさか無自覚だったとは思わなかったよ。


 印象は、正直あまりない。一人でいることが多くて無口。社交的ではないなと思うくらいで、名前も曖昧だった。
 けれど幸宏から話を聞いていくうちに名前を覚えて、印象は相変わらずだったが、悪いものではない。


 そんな昔の片想いの相手に再会した幸宏は、まあ戸惑った戸惑った。見てて面白かった。
 だがしかし。
 あれだけプレイボーイをかましておきながら、やつは本命となるとヘタレだった。
 今までのが本命であるかは知らないが、だいたい接し方とか悩み方が全然違うんだから、そりゃあそうも思うだろ。



 同窓会から連休中は連絡もなく、どうなったのか気になってはいた。
 だから昼休みに、いつも使っている独占状態の喫煙スペースへと引っ張り込んだ。



「須藤とはどうなった?」
「いきなりそれかよ」



 呆れたように言ったが、幸宏は特に不機嫌な様子がない。
 これは、と思った。



「連絡取り合ったり、出かけるくらいはしたんだろ?」
「付き合ってまーす」
「……は!?」



 さすがにあれだけヘタレてたんだから、出かけるのがギリだろうと思い込んでいたが、まさかの回答である。
 しかもドヤ顔で。うぜえ。



「付き合ってんの、いつから!?」
「三日前くらい? お前と会った次の日に連絡して、喫茶店で話をして、そのまま家行ってDVD流してたら可愛い事するからつい」
「可愛いとかついとか突っ込み所ありすぎるけど、はやくね!? 今までのヘタレはどこいった!」
「ヘタレじゃねーよふざけんな。」



 いやヘタレだっただろうが。
 てか、喫茶店はまだしもいきなり家とか、まさかこいつ賭けたな。

 しかし衝撃はそれで終わらなかった。



「あと連休中はずっと泊まらせた」
「…はあ!? まさかお前襲ったり」
「してねぇよハゲ死ね。ゆっくり育むの」
「うわキモい」
「お前に言われたくない」



 失礼な。
 てかこいつからそんな育むとかって言葉が出てくるとは思わなかった。

 とにかく焦らず、色々な隔たりを解消していくのだとか。似合わねえ。
 本命には慎重になるのは分かる。分かるけど、似合わねえ。こいつ強引な所があるからな。



「ま、うまく行ったんならいいけど。 落ち着いたらダブルデートでもしよーぜ」
「は? なんでお前と。彼女が嫌がるだろ」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。それじゃ」
「……うぜえ」



 ぽん、と肩を叩いてタバコを灰皿に落とし、にやにやしながら喫煙スペースを後にした。
 首をかしげる姿を遠目に見ながら、携帯を取り出して、恋人に結果報告の電話をかける。
 幸宏が悩みだしてからちょくちょく話をしてたので、返事は喜びだった。

 ダブルデートの提案も快く承諾してくれる俺の恋人は心が広い。



『隠す必要なくなったじゃん、良かったね』
「だねえ。ま、驚く顔が見れるからいいよ」
『ははは、意地悪いな』
「性分なんでね。───男四人でダブルデートなんて面白そうだな」
『楽しみだね』
「俺も」



 さて、メシ食って仕事するかな。
 あいつの驚く顔が楽しみだ。



fin.

[*←][→#]

35/36ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!