中編 06 四人席に案内してくれた宇佐見は自然とカメの隣に座り、俺はカメの向かい側でガチガチなアホと無表情を眺めてからメニューを手に取った。 メニューには手書きでサンドウィッチやピザの軽食とマフィンなどのデザート系がいくつか載っていて、飲み物はジュースとお茶が用意されているらしい。 とりあえず一応接客担当である宇佐見に注文すると、あっさり受け付けて席を立って作り手に言いに行ったと思ったら真っ直ぐこっちに戻って再び座った。自然に。マジで笑いそうになった。 当然カメは戻って来ると思わなかったのか、ぽかんとしたアホ面で再び悶えるように眉を寄せて目を閉じていた。 注文したものはすぐに来て、薄焼きのピザは結構美味しそうだ。飲み物はお茶にしたが炭酸でも良かったかも。 ピザから向かいへ視線をやると、カメは手元を見ていたが宇佐見はカメを見ていた。 すげぇ見てるけどアイツ気付かないのか?でかい図体でファンシーなウサギ着た奴が隣を凝視してる光景は、ちょっと…いやかなり写真に残したい。 「てか、宇佐見ってそういうの着るんだな」 さすがに抵抗あると思っていたので聞いたら、宇佐見はあっけらかんとした顔で「渡されたから」と答えた。吹き出した。 興味がないというか関心がないのか、やれと言われたらやるのか断る理由がないのか…無頓着なのか? 机にあったウェットティッシュで汚れた口を拭い、残りを口に放り込んでお茶を飲んだ。 宇佐見とカメはこっちを見ていたが、今度はカメが隣を凝視していた。しかし宇佐見はずっと俺を見てくる。 こいつカメが見てるって気付いてて目を合わせようとしてない。若干目線だけは時折寄越しているがすぐに逸らしている辺り、なんつーかお前ら面倒くさい。 カメはカメで段々表情が落ち着いて、むしろ気分が下がっている気がする。 あと厄介な奴が視界でこっちに近付いて来るのが見えた。面倒くさい。 「裕弥ー、なにしてんの」 「……大森」 制服のワイシャツとスラックス姿の大森が平然とした顔で現れた。いや教室にはずっと居たけど敢えて近付いてこなかったんだろうな。このストーカー男。 「堂々と相席すんなよ、着ぐるみメインなんだから」 「別に、教室内だし」 「置物か」 「動くけど」 「ほんと自由だよなーおまえ。てか羽田、ダンスやってんだよなー」 宇佐見に話し掛けていた大森があっさりこっちに声を掛けてきた。 面倒くせぇ事すんなよマジで。という目を向けながら怠そうに返事をすると、大森は知らぬ存ぜぬ顔でカメへと目を向ける。 嫌な予感がする。 「お、初めまして?亀山春彦くん。大森でーす」 「ぅえ、…あ、うん。初めまして…」 「遊び人とか、チャラいとかよく聞くんだよね」 「……へえ、」 あー…こいつ後でシメよう。 一気に表情が暗くなったカメは早くここから出たいと思ってそうな空気を垂れ流している。 マジで余計なことしやがったな。何を狙ってんだか知らないけどわざわざ此処で言う事じゃないだろ、と溜め息が出そうになって宇佐見を見ると、驚くほど真っ直ぐ大森を見ていた。 見るというより、睨んでいるに近い。 [*←][→#] [戻る] |