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中編
07
 


「そんな顔すんなって」


 大森がそれに気付いて苦笑すると、カメは振り返ったが宇佐見は無表情だった。いやさっきもそうだったけど、視線は違う。
 あれは大森に対する牽制に近かった。
 ……なるほど。


「もうすぐ時間だし、行こっか」
「ん?あ、そうだな」
「ごちそうさまー」


 俯いたままカメが立ち上がって、時計を見ると次のダンスの開始十五分前だった。

 さっさと受付へ行って金を払ったカメは振り返る事もなく教室を出て、俺はその背中を見てから振り返り、とりあえず大森に対して無言で指をさしてから親指を下に向けてやった。
 直後に白ウサギが大森の脇腹を殴っているのを見てしまい、アイツああいうことするんだなと意外ではあったけど、こっちを見た宇佐見にはグッドを向けといた。

 先へ行ったカメに追い付くと、カメは小さく呟いた。


「……俺、ヤなヤツだね」
「お前はイイヤツだよ」


 ただ嫉妬しただけだから。そんなん誰にでもあるし、あれはどう考えても大森のバカが悪い。
 ただ、宇佐見が大森を殴っていた事は言わなかった。






 ダンスの二回目以降、休憩中にカメは宇佐見のクラスには行こうとしなかったし、俺も再び引き摺って行こうとは思わなかった。去り際があれだったし、大森面倒くさいし。
 何も考えないようにしたいのか、カメはひたすらダンスに集中しているようだった。

 文化祭も終わりを迎え、ダンスだけで片付けがない俺達は打ち上げに同行する高阪を待つ間に、各々別のクラスの片付けを手伝った。
 体育館で行われていた演劇の大道具を分解して、土方スタイルの同級生や先輩後輩が入り交じる中である程度片付けをしてから、正面玄関へ戻ると大半のクラスメイトは既に集まっていた。

 後から現れた高阪は相変わらず怠そうだったが、三回目のダンスに参加させた時は印象が変わるほどの動きを見せたので女子生徒が高阪に群がっている。
 まあ分からなくもない。普段のだらしなさを知っていると、ダンスをしていた姿はかなり印象深いだろうし他の生徒も騒ぐくらいだった。
 また変にモテるんだろうな、と先行く高阪の背中を眺め、隣でぼんやり歩くカメの考えている事を予想した。

 冬休みに入る前に何とかしねーとな。



 打ち上げは学校近くのファミレスで、団体席を用意してもらったのか一角だけ空いていた。
 高阪と委員長、俺とカメで四人席に座り、まるで合コンみたいな雰囲気で打ち上げは行われた。
 その間もカメは若干上の空で、どうせこれから先準備室に行きづらいとか考えて悩んでんだろうなと隣を見ながら思う。
 そしてその様子の変化を高阪も気付いているようで、たまに観察するようにカメを見ては俺と目を合わせてくる。俺はただ無言で高阪を見るだけだったが、何を察しているのか何も言わずに他の生徒へ愚痴を言ったり騒ぎすぎる所を叱ったりと忙しそうだった。


 


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