中編
幼馴染みの告白。‐01
───初めて亮平さんと出掛けた日から暫く、現状週に1・2回は会っていた。
ゲームは相変わらずほぼ毎日夜にボイチャしながらいつもの時間で、土曜日は朝や昼から会ってどこかへ出掛ける。
平日は亮平さんの仕事が早く終わるかつ俺のバイト終わりに、亮平さんが近くで待っていてくれて夕飯を一緒に食べたりと以前よりも外出が増えた。
それもあってか土曜の朝からカメが来るのも減って、しかしアイツも自分の家に居る事が増えたようだった。
相変わらず何か言いたそうというか、何か聞いてほしそうに俺を見るけれど待てど暮らせど話をしては来ない。
そういう瞬間が頻繁に感じられるようになっている気がするのに、珍しく話しづらい事なのだろうかと考える度に宇佐見の存在がちらついて靄を抱えた。
「……もーすぐ文化祭だねー」
昼休み、後ろで机に項垂れる幼馴染みの後頭部を眺め、旋毛を見つけて指で刺した。何も反応がない。ただの屍かコイツは。
文化祭が近付くにつれてカメの元気が減っている…ような気がする。テスト明けの脱力かと思っていたがどうやら違うらしい。
文化祭は一週間前準備に入ると部活も同好会も出来なくなるから、たぶん宇佐見も準備室には行かなくなる。
そんな話を数日前にちらっと溢していたからこの気力の無さはそれが原因だろう。
何となくの勘だった。
カメが宇佐見に抱いているのは本当に友情なのか、という疑惑。
執着に似ている言動は日に日に増しているように思う。
心の靄が濃くなる。
「……、」
聞きたい。聞きたくない。
「宇佐ちゃんのとこ文化祭なにやんのかなぁ」
「本人に聞け」
「……みーくん、」
「家以外でその呼び方したら二度と泊まらせない」
「すみません……」
羽田くん怖い、と組んだ腕に頭を乗せたカメは少しだけ唸った後にゆっくり顔をあげた。
「……夜行って良い?」
「おー」
今日はバイトもないし、亮平さん今週忙しいって嘆いてたから暇だろうと頷き、情けない顔の幼馴染みにポッキーの先を差し出した。
躊躇いなくそれを銜えたカメはちびちびとポッキーを噛み砕く。
この餌付け感が好きだ。大人しく食べさせられている幼馴染みの違和感の無さはこの距離感じゃないと成し得なかった。
大抵悩んでいる時はお菓子を与えると落ち着いて考え始める奴だから、これを食わせておけば頭も回ってくるだろう。どうせ同じようなことをグルグルしてんだ。
窓の向こうから羨ましそうに睨み付けてくる幼馴染みのストーカーは視界の端に捉えているが無視をして、だらけるカメにポッキーを与え続けた。
今夜こそ話をする気になるかな、と聞きたいやら聞きたくないやら矛盾した気持ちがあって、その靄を消したいが為に餌付けをしながら亮平さんからの過去メッセージを読み返す。
次にどこ行きたいかあったら教えて、といういつかのメッセージに、亮平さん家にあるゲームやってみたいなと浮かんだ内容が何だか恥ずかしくて打てなかったのを思い出した。
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