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中編
楽しい、は画面の外側で‐01
 


「どこ行くかー、適当で良い?」
「はい。……亮平さんはいつ免許取ったんですか?」
「18になってすぐだね、バイクを先に取ってたんだけどやっぱ車欲しくてさ」
「俺も取ろうかな…」
「取っといて損はないぞー。美咲なら一発で本試験受かりそう」
「なんすかその過大評価」
「やるってなったら真剣じゃん?ゲームやっててそうかなって」
「……まあ、雑にはやらないですけど」


 なるほど性格はゲームにも出るとは知っていたが、直接言われるとむず痒い。
 この人は何でこう次から次へと褒め言葉が出てくるのか。慣れているのか癖なのか性格なのか、理由は色々あるだろうけど何故か慣れとか癖は仕事柄とかが良いな、なんてまた変な事を考えた。

 車は近所から離れて都心へ向かっているのか、広い道路に高層ビルが目立つ。


「───美咲は部活やってる?」
「いや、バイトするって決めてたので帰宅部です」
「懐かしいな帰宅部。そういやバイト長いよな」
「16になってすぐ始めました。ていうかよく覚えてますね」


 自分が亮平さんに気付いたのはやっと慣れてきた頃だったし、意識すらしてなかった。覚えるのに必死なのもあったけど。


「ずっと行ってるからさ、なんか知らない子いるなーって。小遣い稼ぎとか?」
「…ゲーム買いたくて」


 両親もゲームは好きだから言えば買ってくれるんだけど、買わせてばかりは気が引けるし色々なゲームが欲しかった。
 バイトを始めた目的はどうあれ、今は両親に何かしら買ったりも出来るから部活よりバイトを選んでよかったと思っている。
 亮平さんは俺のそんな安易な理由でも明るく笑った。


「あはは分かる! 色んなのあるもんな。俺も凄い集めてさ、友達にゲーム部屋って言われてた」
「そんなにあるんですか?」
「あるね、パソコンにも沢山あるけどテレビゲームでも迷うくらいある。押し入れの一部が埋まってる」


 やばい気になる、なんてちょっと思ったけど言うのは何故か憚られて、どんな種類があるのか聞いたら出るわ出るわだった。
 恋愛シュミレーションやエロゲは無いらしい(あっさり言われて気付くのが遅れた)けど、それ以外なら選り取りみどりなんだとか。羨ましい。
 今は大人の経済力だと言って、昔は亮平さんもゲームの為だけに働いていたらしい。外見だけなら結構アウトドアのように思えるのに意外とインドアタイプだった。


「周りが彼女とかどうとかで青春してる時に俺はゲームに夢中だったな」
「…彼女作らなかったんですか?告白されたりしてそう」
「何回かね。彼女も一時期いたけど、合わなくてすぐさよーなら」
「えー…」
「ゲームとワタシどっちが好きなの?ってお決まりのやつな」
「うわー…」


 好きなものを止めてまで付き合いたいとは思えなかった、と亮平さんは言う。その気持ちは理解出来る。
 好きな人と一緒に好きな事が出来たら楽しいだろうし、お互いに楽だと思うけど、やっぱり比較はしてしまうんだろうな。


 

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