中編 6 四度も五度も出しても萎えない自分のぺニスに嫌気がさしてきた頃、槙野は下から上へと戻ってきて、また首筋にキスをした。 顔をあげた槙野は、そのまま無言で唇を食らう。貪るように、啄むように、激しく優しく。 それに溺れながらも鋭い感覚は滑りを纏う手の感触を尻に感じ、撫でるように滑る指先のそれまでも快感に変えていく。そして右手で精液を受けていた理由を知る。 くすぐったい、焦れったい。 出せば出すほど感じていた、体の奥の疼きの正体を知る。 そこで初めて予想した。 この熱を冷ます唯一の方法。 まさかこうなるとは、今まで考えたこともなかっただろう。 けれど嫌悪感はなかった。 たぶん、槙野が相手だからかもしれない。そう考えると、自分が短期間でかなり槙野に自分を許していたのかと思う。 閉ざしていた内側を知っていた槙野に。 それを容易く、踏み込まずに開いたその存在に。 ゆっくりと指が埋め込まれていくのを感じながら、舌先や口内が器用に犯されていく。 槙野はずっと俺を見る。 目を細め、熱を含み、ひたすら快感を引き出していく。 上からも下からも聞こえてくる艶かしい水音に、ゆっくりと優しく中を解していく指の感覚。違和感と、痺れ。 奥まで入り込んだ指が抜けていき、ちょうどぺニスと睾丸の裏側あたりに触れたとき、今までにない強烈な刺激で全身が跳ねた。 喉から出たのは叫びにも似た高い声で、しかしそれは槙野の中に消えていく。くぐもった声が溢れ、槙野は笑った。 少しだけ嫌な予感がした。 口を離され、至近距離で見つめあい、その中で止まっていた指が再び意思を持って確かな場所に当たる。 「あぁ…ッ、ん、」 「いい声」 「るさ…っ、アッ、う、それ、やだ…っ」 「慣れねぇ感覚だからな。慣れるまでがんばれ」 「慣れる、わけなぁッ、うぁ」 なにが、慣れるまでだ、こんなもの慣れるわけない。 分かっているくせに無理なことを言ってくる槙野は、時々キスをしながら、執拗にそこばかりを刺激する。 指が、撫でたり突いたり引っ掻いたりして、追い詰めては出そうで出ないギリギリをさ迷わせる。 頭を、頬を撫でながら、額や鼻筋、唇や頬に唇を落としていく。 甘い。 刺激は強く激しいのに、槙野のキスが酷く甘く感じた。 混乱する。分からなくなる。叫びは止まらない。 「抑えるなよ、声」 「や…っんん、あっ」 「意識するな。ちゃんと、全部拾えよ」 「あ、…ふ、あら、た…っ」 「ん?」 「い、きた、い…んっ、あぁっ」 「……やらし」 必死に願って言ったのを、舌舐めずりしながらそう返してくるお前のほうが余程やらしい。 唇にキスを落とすと、槙野は体を起こして中をかき混ぜながらぺニスに触れた。 それだけでもう達してしまいそうになる。 しかし槙野は、そのまま手ではなくなぜか口を近づけ、張り詰めるそれを舐めた。 予想外の感覚に腰が跳ねる。 一ヶ所集中の刺激に加え、手よりも快感が強い舌で射精を促す槙野が、その時は本当に心から変態だと思った。変態というより寧ろ鬼畜だ。 口に含むのではなく、舌だけで全体を舐め回し、先を開くように舌を割り入れ、吸い付き、頭だけをぐるりと舐める。 その動きと感覚、内側の刺激というあり得ないほどの快感に、また俺は何度目かの白濁を放った。 量は少ないが、出るには出るらしい。 中から指が抜け強い刺激が治まっても、内側の熱は変わらず寧ろ強くなっているように感じた。 正直、こわいと思った。 これがいつ無くなるのか、どれだけやれば消えるのか、その頃に自分はどうなっているのか。 必死に酸素を吸い込み吐き出すのを繰り返しながら、脱力していく体に力を入れて槙野の手に触れた。 一瞬驚いたものの、槙野はそのまま指を絡めて繋ぎ、どうしたのか聞いてくる。 何もなかった。理由は見つからない。 ただ、手が動いた。 [*←][→#] [戻る] |