中編
7
無言で見つめていると、槙野はまたキスをしてくる。何度も何度も繰り返したそれは、やはり快感をつれてくる。
槙野も既にズボンは脱いでいた。いつ脱いだのか知らないが、下着を押し上げるぺニスに、随分我慢をしているのだろうと感じた。
ただひたすら俺を落とすだけに動き、自分の体のことなど意識すらさせなかった。
「新、」
「なんだ」
瞼に唇が触れる。目を閉じたまま、続けるように言うと、暗い視界の中間近で息を飲む音を聞いた。
目を開くと、不機嫌そうな槙野がいた。
なんだ、と思ったとき。
「無闇に煽るのやめろ」
「煽ってない」
「だから無闇だっつってんだ。慣れねぇうちは抑えようとしてんだから、余計な事言うな」
「……我慢、してるだろ」
「当たり前だバカ。慣れてきたら壊す」
「野蛮」
「おまえ…」
はあ、とため息を吐かれ、おかしくて笑いが込み上げてきた。
ああ、笑えた、と思うと、槙野も笑っていた。
深くキスをしながら、足の間に割り入る槙野の体の熱を感じ取る。
俺の下半身に飛び散った精液を掬い取ると、完全に立ち上がっているそれに塗り付け、窄まりに頭を擦り付ける。
そのささやかなくすぐったさに身をよじるが、腰を押さえられ、足を持ち上げられる。
ああ、この形で槙野とセックスするなんて思いもしなかったのに、人間関係とは複雑なものだな、となぜかしみじみと思った。
指とは比べものにならない質量のものが、柔らかくなってはいるが元々受け入れる所ではないそこにゆっくりと埋め込まれていく。
息苦しさ、無理矢理押し開かれる鈍い痛み、それすら快感にしてしまう恐ろしい効能、圧迫感、物体の熱。
短く、ゆっくりと抜き差しされながら奥へ奥へと進んでいく塊に、息が詰まっていく。
辛いとは思わなかった。
苦しいとは思った。
槙野の足が当たる感覚と、覆い被さって出来た影に、いつの間にか閉じていた目を開く。
「きっつい」
「…は、っあたり、まえ、」
「痛いか?」
「そこまで、は…、ん、息、苦しいけど、」
「ゆっくり呼吸しろ」
「ん……、は、はあ…」
「朔」
「なに、ん」
愛でるようなキスをされ、舌を吸われ、なぞられ、内側の異物感がはっきりと分かる。力が入ったらしい。
「絞めんなよ…」
「自業、自得…っん、ぁ、」
ずるりと異物が抜けていく排出感に、ビリビリとした快感がついてくる。
耳元で槙野の詰めた息遣いを聞きながら、首に手を回して背中を撫でた。掴みたかったが、引っ掻くだけなので息苦しさを紛れさせるように撫でる。
「それも、煽ってんだよ、」
「ちが、あ、あっ、んん…っ」
「はあ…っ、くそ、最初くらい優しくさせろっつの」
耳に直接熱い息を感じながら、それすら快感を助長させる要素に変わり、緩やかだった動きが滑りを得て早さを増していく。
肌がぶつかる音、荒い息遣い。交わって分からなくなる感覚。
ただ感覚を少しでも慣らすために動く。細かな快感ですら器用に拾い上げる自分が、理解できなくなる。
「っ、はぁ、一回出すぞ」
「ん、ん、あぁっ、ふ…っ、」
一際奥まで貫かれ、内側で放たれた感覚を拾った。
止まる動きと、互いの息遣いを交わらせるようにまたキスをした。
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