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短編集(~2019)
09
 


「これ、って…」


 どこだ。
 どこかで聞いた。

 キョロキョロと見渡しながら、小走りになる。





 ───少し進んだ目の先に、それはあった。


「───…もない日!祝え、なんでもない日、万歳!」


 奇妙な歌詞を歌う、声と。
 長いテーブルに、幾つもの食器。というか、ポットとカップ。
 イスも沢山並び、しかし座っているのは二人だけ。

 カップを持ちながら、歌っている。



 ───…君と僕とが生まれなかった日
 めでたい なんでもない日
 祝え なんでもない日
 祝え なんでもない日 万歳!

 なんでもない日 万歳!
 (僕の) (誰の?) (僕の?) (君の?)
 なんでもない日 万歳!
 (君の?) (俺の?) (そうだ!) (俺だ!)
 乾杯しよう 祝おう おめでとう
 なんでもない日 万歳!
 ヤッホー! ヤッホー!

 誕生日は1年に1度っきり
 そうとも たったの1回さ
 でもなんでもない日は364日
 ってことは?
 年がら年中お祭りだ! 万歳!

 なんでもない日 万歳!
 (私に?) (そうだ!)
 なんでもない日 万歳!
 (私の?) (そうだ!)
 さあ ロウソク消したら願いが叶う
 幸せやってくる

 なんでもない日 おめでとう!───




「……はぁ?」


 思わず変な声が出た。

 戸惑いながらも近づくと、そこには帽子を被ったひとりと、うさぎ。

 また兎かよ。
 と内心突っ込んだのはさておき。


「おや?お客さんだよ、うったん」
「そうだね、いっちゃん」

「……はぁ?」


 目の前で変な声をだしてしまった。
 だって。
 うったん、と、いっちゃんって、なに。

 帽子を被ったヤツが、兎をうったんと呼んで。
 兎が帽子を被ったヤツを、いっちゃん、と呼んだから。

 よくわかんねぇ。


「……なにしてるんですか」


 恐る恐る聞いてみた。
 答えたのは、帽子を被ったヤツだった。


「お茶会さ」
「お茶会?」


 こんな草原のど真ん中で?




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あきゅろす。
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