短編集(~2019)
02
「東坂、今日晩飯なに食べる?」
「………オムライス」
土曜日の夕方。
休みだから授業はなく、休日はいつも二人で部屋にいる。
行くとこもないし東坂も出掛けたりすることはない。
変なイントネーションが気になる『オムライス』発言に口を緩める。
東坂はオムライスが好き。
たいてい休日の夕飯はオムライス。
「ねえ、東坂、」
「………」
ソファーにうなだれてた東坂が顔を向けて、目が合う。
居間と呼ばれる真ん中の部屋。
両側には個室がある。
俺が右側、東坂が左側。
テレビにソファー、テーブル。一人暮らしの部屋みたいな居間。
「動物好き?」
「……」
頷く東坂を見る。
好きらしい。意外だ。
ソファーじゃなく床にクッションを置いてそこに座って向かい合う形になってた俺は、足元に置いといた雑誌をテーブルに置いた。
開いた状態で置いた。
そこに映るのは、戯れる三匹の子猫の写真。
東坂は結構好きらしく、ゆっくりだけど身を乗り出してきた。
ちなみに俺は、猫が好きだ。
「……むぞらしか」
「……む?」
「……」
沈黙。
なんて言ったんだ今。
聞き返そうと東坂を見たら、リアルに頭を抱えてた。
「…喋るっちこうなるけん嫌なんや」
「……かッ…」
かわいいじゃねぇかちくしょおおお!
なに、なにその訛り!
どこの方言!?
ずっと気になってたんだけどどこ!
「東坂、どこ出身?」
「……博多」
「イイ。俺好きだ」
思わず出た言葉に自分でびっくりしてたら、それ以上に東坂はびっくりしたらしく真ん丸目を見開いてた。
ほんのり顔が赤いんですけど。
かわいいんですけど…!
「……おかしかやろ」
「おかしくない!」
むしろイイ!
即答したら、はにかんだ笑顔が返ってきて、ぶっちゃけ俺、やばいっす。
ちょーかわいい!なにこの生き物!
俺の隠れた癒し系、東坂は、博多訛りが抜けない見た目赤毛不良です。
飽きない。飽きないよ。
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