短編集(~2019)
03
額を寄せ合って、近くには吸い込まれそうな目がある。
言葉が出てこない。
ついでに声も出てこない。
「…僕にとって君は大切です」
違う。
そうじゃねぇよ。
「俺は好きなんだけど」
「……」
「なぁ、」
「……」
「愛してんだから、全部欲しくなんの当たり前じゃねぇ?」
俺はイチの全てが欲しい。あいつに嫉妬して、最初は荒々しく抱いたけど。
落ち着いてきて優しく愛した。そのことにイチが気付いてないわけない。
「…本当に我儘ですね」
「っせーな。好き過ぎんだよバカ」
「どっちかバカですか」
いつまでもいつまでも両手で頬を挟むから、俺もイチの頬を挟んだ。
俺の手で顔がすっぽり隠れる。
愛しいと、思っちゃいけねぇのかよ。
「愛しいですよ」
「……」
「好きじゃなきゃ、全力で抵抗してでもここには来ません」
「……」
「愛してなきゃ、透真君に安心感なんて抱きません」
ただ、好きとか愛してるとかよりも、数倍幸せだと思える言葉を言うお前を愛してる俺は。
「…首輪でも買っとくか」
「嫌です」
そんくらい離したくねぇって事だ。
啄むようにキスをして、手を顔から腰に回して抱き寄せれば、愛しい両手は頬から首に回る。
甘すぎて、もう蕩ける所すらねぇよ。
END
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