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暑い日には
はぁ〜、とタッツミーが大きな溜め息を吐いて、座ったままボクの方を振り返る。ボクは今、タッツミーの部屋で彼を抱き締めるように、その体に腕を回している訳で。


「ジーノ、お前さ…ちょっと引っ付きすぎ。あちぃから離れろよ。」

「え〜嫌だ。だってボク別に暑くないよ。」

「この部屋、風通し悪い上に扇風機しかないんだぜ。…俺、暑くて死にそうなの。だから今すぐ離れて。」

「一緒に居る時くらい、タッツミーに触れていたいと思うのは仕方ないでしょ。…ボク暑いのなんて全然平気だけど。」

「だから、お前は良くても俺は無理なの。」


タッツミーはボクの体から抜け出すと、扇風機の前に移動して涼み始めた。


「本当暑いわ。今年は異常だよな〜。あ〜何かガリガリ君的な物が食べたくなってきた。」

「タッツミー、そのガリガリ君って何だい?」


ボクの質問にタッツミーは面倒くさそうに、コンビニとかに売ってるアイスだよ、お前知らね〜の?と驚いた顔をした。


「お前と話してたら何かアイス食いたくなってきた。…俺、今からコンビニ行ってこようかな。ジーノ、お前も来る?」

「ボク、コンビニのアイスよりも美味しいジェラートのお店知ってるよ。それにボクさ、この前ファンの子達に囲まれちゃったから、車ならいいけど、あまり出歩きたくはないかな。」


ボクがそう言うとタッツミーは、俺はコンビニのアイスがいいの、それにこっからすぐのコンビニだから大丈夫だってと返してきた。


「タッツがそこまで言うなら…いいよ、ボクも一緒に行く。」


ボクの返事にタッツミーは少しだけ嬉しそうに頷くと、ポケットに手を突っ込んで部屋を出た。



*****
夜になっても蒸し暑さは残っていて、クラブハウスを出た途端、生温い風がボクの髪を揺らした。きっちり七分袖のシャツを着ているボクと違って、タッツミーは薄手のTシャツにサンダル姿と随分ラフな服装なのに、よほど暑いのが苦手のか、手で扇いでいた。


「ジーノ、暑くない?」

「まぁ暑いけど、我慢できないってほどではないよ。」

「お前、すげ〜よ。やっぱりイタリアの血が入ってると違うのかな?」

「う〜ん、どうだろうねぇ。」


他愛のない話をしながら、ボクらは住宅街をゆっくりと歩いた。ボクは隣を歩くタッツミーをそっと見る。今でも時々不思議に思う。タッツミーは、ボクが今まで付き合ったどの恋人とも違うタイプなんだ。それにボクは、恋人とこんな風にコンビニに行ったことなんて1度もない。大抵お互い綺麗に着飾って、高級なレストランやホテルで楽しい時間を過ごすのが普通だったのに。


でもタッツミーの隣に居ると、ボクは自然体でいられるんだ。綺麗に着飾って笑顔を作らなくても、彼はボクを優しく包んでくれる。…もうボクは、タッツから離れることなんてできそうにもないよ。





コンビニに着くなりタッツミーは子供のように、あ〜涼しい、天国だよ、ここ、と幸せそうに呟いた。そしてお目当てのアイスのコーナーに向かった。


「どれにしよっかな。ジーノも何か買う?」

「ボクはいいからタッツ、好きなのを選ぶといいよ。」


えぇっと、何だったかな…ゴリゴリ?君だったけ?タッツミーはそのアイスを選ぶと、意気揚々とレジへと向かった。本当に子供だよね、可愛いなぁ。ボクはそう思わずにはいられなかった。



*****
コンビニからの帰り道。ボクの隣を歩きながら、タッツミーはさっそくアイスを頬張っていた。


「夏のアイスって最高。今俺、超幸せ。」

「それ、そんなに美味しいのかい?」

「言っとくけど、見たってあげないかんな。俺が買ったから、俺のアイスです。」

「タッツが美味しそうに食べるから、どんな味か気になってしまったのさ。だから…味見させてもらうよ。」


あげないって言っただろ、と言ったタッツミーの口をボクはキスで塞いだ。そしてそのまま彼の口内を味わった。彼の舌に自分のそれを絡めると、アイスを食べていたからだろう、ひんやりと冷たかった。


「ご馳走様。でもやっぱり甘ったるいなぁ。タッツ、良くこんなの食べられるね。」

「ジーノ、お前…何してんの!誰か来たらどうすんの。」

「何って味見だよ。それに夜も遅いから、大丈夫だよ。」


お前馬鹿だろ、暑さで頭やられたな、とタッツミーはぶつぶつ文句を言った。そんなタッツミーにボクは得意の笑顔を向けようとして、彼の指先に視線がいった。外の気温が高いせいか、アイスが溶け出してタッツミーの指を伝っていた。ボクはそのまま吸い寄せられるようにタッツミーの腕を持ち上げると、彼の指を舐めた。


「ちょっ、ジーノ…あっ。」


タッツミーはぎゅっと目を瞑った。ボクに舐め取られた指が、小さく震えていた。


「耳が弱いことは知っていたけど、タッツって指も感じるんだね。…ボク、いいこと知っちゃったな。」


「この馬鹿吉田。さっきからお前本当…」

「タッツミー、涙目で怒っても全然怖くないよ。あとそれから吉田って呼ばないでね。」


もうお前なんて知らない。そんな風にタッツミーはボクの先を歩き出した。まだボクの舌の余韻が残っていたのか、両手でしっかりとアイスの棒を握っている姿に、ボクはクスリと笑ってしまった。


「そうだ、ジーノ。お前罰として、さっき言ってたジェラート今度奢れ。オフの日ちゃんと空けとけよ。」


先を歩いていたタッツミーが振り返らずにそう言った。


それは恋人の遠回しなお誘いで。


「勿論だよ、タッツミー。必ずタッツに食べさせてあげる。それでさ、その後そのままボクの部屋に来ない?タッツの部屋よりずっと涼しくて快適だよ。」

「…確かにお前の部屋、でかいエアコンあったしな。いいよ、暑くなく過ごせるし。」


タッツミーが小さく頷いてくれて、ボクは嬉しさで一杯だった。



*****
夏は日差しが強くて日焼けが心配だし、暑さは我慢できても、練習に身が入らなくなりがちになる。汗だってかくのは嫌だしね。


でも暑い中、タッツミーと一緒にこうやってアイスを買いに行くのも悪くないと思えるんだ。それに今度一緒にジェラートを食べる約束もできた。


もっともっと暑い日が続いて、我慢できなくなったタッツミーが、ボクの部屋で過ごせばいいのにな。仕事を持ち込んでもボクは構わない。疲れたタッツに美味しい夕食を振る舞ってあげたいと思う。


暑さが続くのは嫌だけれど、こんな風にタッツミーと過ごせるかもしれないなら、歓迎してもいいかな。そんな風に思いながら、ボクはタッツミーを追い掛けた。彼はボクが追い付くと、歩く速さを緩めて、早く来いよ、と恥ずかしそうに言った。ボクはタッツミーに微笑むと、一緒の歩幅で夜の道を歩いていった。






END






あとがき
タッツミーの部屋には、扇風機しかないという設定にしてみました。

暑い季節は本当にアイスやジュースが美味しいですよね^^


ジノタツの2人には仲良くコンビニデートしてもらいました。アイス食べてたら、味見は絶対キスでするという何ともベタな感じになりましたが、好きなシチュエーションなので入れました〜。


暑くてもらぶらぶしてるジノタツ大好きですv


読んで頂きありがとうございました(^^)

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