18 ◆ さてどうしたものか。 勢いで家にまで来てみたものの、呼鈴押しても返答はなかった。 実家ということで多少は緊張感をもって来てんのに……誰一人出てきやしねぇことに拍子抜けしたとこだ。 ───泣き腫らした目をしているだろう愛姫はいったいどこに行った……? 携帯を開き、アドレス帳から通話ボタンを押す。 『はい?』 「お前いまどこだ」 『今家についたけど』 「よし、今すぐ会社に行け」 『はあ? だから今帰ったっつったろ』 「だから行けっつってんだろうが」 『何でだよ! お前が放った仕事を終えてきたんだよ! 俺は!』 「……主任から平に格下げすんぞコラ」 『……え、』 「とっとと行って愛姫の実家の番号を調べてこい」 『あのな、そういうのを職権乱用っつーんだぞ! だいたい、』 「分かったらすぐに折り返せよ。じゃーな」 閉じた携帯を助手席に投げ捨て、二階を見上げてみた。 いくつかある窓の中、律義にカーテンが閉められている部屋がある。白いレースの向こうのピンク色のカーテンと、窓際に飾られているぬいぐるみの後ろ姿。少女趣味のようなそれが、あいつの部屋がたぶんそこだと教えてくれた。 出かけているのか寝ているのか、それとも…… その薄暗い部屋で一人、泣いているのか。 玄関先にもう一度向かいドアの前に立つ。中から物音が聞こえることもなく、人の気配もしない。 何回呼びかけてみても返答があるわけもなく、その場をあとにした。 ……ストーカーか、俺は。人に見られていたら確実に不審者扱いされてんだろうな。 *←→# |