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「お前がとっとと話してりゃ無駄にあいつを泣かさずにすんだ」
「……心配だったんだよ」
「あ?」
「森下があんまり嬉しそうにあんたのこと話すから」
「それが何の心配がある」
「あいつは素直だからな。何でもすぐに信じて騙されやすい」

ああそれで……その心配は分からないでもない。が、

「分かったような口を聞くな。あいつはちゃんと人を見る目を持ってんだよ」
「……」
「よけいな世話やくんじゃねぇよ」
「……」
「あいつの面倒は俺が見るから放っとけ」
「……分かった」

頷いたわりに、怪訝そうに眉をひそめている。

「まだ何かあんのか」
「……もうヤったの?」
「あ!?」
「遊ぶだけ遊んで棄てたりしたら許さないからな」
「てめぇ何だその言いぐさは」

そんなもんが目的なら俺はあいつを選んじゃいねぇよ。

「そう、ならいいけど」
「愛姫によけいなこと吹き込んじゃいねぇだろうな?」
「言えるわけないでしょ」

は、そりゃ良かった。




女を抱えてタクシーに乗った高橋を見送って、不安そうに瞳が安定しない愛姫の頭に手を乗せる。

───結局のとこあの男は、愛姫を泣かすどころか、旧友の心配をしていただけのことだったのだ。
見つけた時に泣いていたのも……あれは馬鹿な愛姫がこんな奴に感情移入してしまい、勝手にぴいぴい鳴いてただけの話だったと。
そして俺は恥をかかされたのか。……まったく勘弁してくれ……
しかしあの状態じゃ誤解してもしょうがねぇよな……と、自分をなだめてみる。くそ、無駄足かよ。

「ハル……」
「……悪かったな」
「もう……怒ってない?」
「ああ」
「ごめんなさい」
「もういい」

そうだ、こいつはもともとそんな奴だったろ。分かっていたことじゃねぇか……人のことでも我事のように感じて泣いてしまうほど、純粋な女を選んだのは俺自身だ。

「あの……今さらだけど……どうしてここにいるの?」

そういえばそうだ。

「お前……何を隠してる?」
「え……隠すって?」
「電話で何か言いかけてたろ。あれ何だ?」
「あ、それは……いっぱい聞かれて……なんて答えたらいいのか分からなくて……」
「は?」
「だから……あの……好きな人はどんな人か、彼氏はできたかとか……そんなこと……」
「……」
「初めてできた恋人……だ、大好きなハルのこと……説明っていうか……」

またこいつは……
目を閉じてため息を吐いた。そんなことで仕事も投げ出して恥をかきにきたのかと、自分に呆れてしまう。とはいえ……

真っ赤な顔して、大好きだと言う目の前の愛しい女が、両人差し指をつつきあったりくるくる回したりする姿は……可愛いの一言に尽きる。




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