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愛姫の髪の間に指を滑らせて、ゆるゆると撫でているとバツの悪そうな顔をした高橋が、肩を竦めてふっと笑う。あ……?
そのしぐさにいらだちを覚えたが、愛姫をこれ以上泣かすわけにはいかないので、喉まで上がってきている文句をぐっと飲み込む。
と、ふいに背後から間抜けな声が聞こえた。

「あれ? あたしの部屋じゃない〜」

誰だよお前。

「あー、いいから寝てろ。ちゃんと連れて帰ってやるから」

なだめるように接する高橋を見て違和感を感じる。

「愛姫」
「ぐすっ……はい?」
「何だあれ」
「え? あ、みどり」

二人を見て目を細める愛姫が、俺から離れてそっと近づいていき、ヒソヒソと何かを耳打ちすると、高橋は数秒遅れて何度も首をふる。

あんだけ泣いてやがったくせに、にこにことえらく嬉しそうに戻ってきた愛姫が、俺を見上げて背伸びをした。

「ハル」

肩に手をかけてきたので軽く腰を落とすと、今度は俺に耳打ちしてきた。

「あのね、高橋くんね、ずーっと前からみどりのことが大好きなんだよ」
「は?」

小さな手で口元を覆い、嬉しそうに笑う愛姫を見てガクンと力が抜けてしまう。
慌てて二人を見ると、寝息をたてる女に送る高橋の視線は、あきらかに好きな奴へと向けるそれだった。

「マジかよ……」

空を見上げてため息を吐き出す。

「愛姫……」
「え?」
「お前……何で泣いてた?」
「だ、だからそれ、は……」

は? さんざん聞き逃していた答えがそれか? いい加減にしろ。

「ふざけんな」
「ハル?」
「バカくせぇ! ふざけんな!」
「あ、え、あの……」

体を反転させて戸惑う愛姫から離れる。

「おいコラてめぇ!」

高橋の頭を掴み上を向かせると、なに? と、邪魔をするなと言わんばかりに不機嫌な返事が返ってきた。

「何でもねぇことをもったいぶってんじゃねぇよ」
「ああ聞いちゃったの?」

ふざけんじゃねぇぞ。だったら何か、俺が勝手に誤解して空回ってただけか?




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あきゅろす。
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