06
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場所を移動しては盛り上がり、半分ほどの人達は酔って完全にできあがってしまっている。お酒が飲めないあたしはと言うと、みんなのお世話に大忙しで三次会ともなれば、そう楽しんでばかりもいられない。
「あ! どこ行くの?」
「んー、ちょっとトイレー」
千鳥足でフラフラと進む高槁くんは、明らかに違う方へと進んで行く。
「違うー! ちょっと待って!」
慌てて手を引いてお手洗いに連れていく。ふぅ……
久しぶりに会ったみんなはすっかり大人になった外見とは違い、性格は変わってなくて嬉しかったし、すごく楽しかった。
だけどあたしは、怒っていたハルを思うと、時間ばかりが気になっている。時計を確認してみると、すでに二時を過ぎていた。そろそろ閉店も近いんじゃないんだろうか。
「森下、なんか変じゃない?」
「変? 」
「途中から上の空ー」
「そんなことないよー」
席に戻ってそわそわしていると、ふらふら帰って来た高槁くんが隣に座った。
お手洗いの場所も分からなくなるほど酔ってるくせに、そういうところは鋭いんだから。
「楽しくない?」
「すごく楽しい!」
「途中まではねー」
「うん、途中まで……あれ?」
「誘導尋問成功ー。いくつになっても単純な奴」
いたずらっ子のように八重歯を見せて、得意気に笑っている彼の人を気づかう性格は、アルコールの匂いにまみれても変わらない。
……誘導尋問なんてちょっとずるい。
「じゃあ質問ー」
「なーに?」
「今日の電話の相手は彼氏ー?」
「あ、と……上司ですよー」
「ふーん。上司、ねぇ……」
「なに?」
「別にー。よっぽど怒られでもしたか」
「ちょっとだけね」
「今は気にするな。ほら、楽しめ! 飲め! 」
うん、そうだ。ハルには明日一番に連絡して、ちゃんとごめんなさいしよう。
「あ、こら! まだ寝るのは早いぞ!」
あ、また一人潰れちゃった。
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