06 ◆ 場所を移動しては盛り上がり、半分ほどの人達は酔って完全にできあがってしまっている。お酒が飲めないあたしはと言うと、みんなのお世話に大忙しで三次会ともなれば、そう楽しんでばかりもいられない。 「あ! どこ行くの?」 「んー、ちょっとトイレー」 千鳥足でフラフラと進む高槁くんは、明らかに違う方へと進んで行く。 「違うー! ちょっと待って!」 慌てて手を引いてお手洗いに連れていく。ふぅ…… 久しぶりに会ったみんなはすっかり大人になった外見とは違い、性格は変わってなくて嬉しかったし、すごく楽しかった。 だけどあたしは、怒っていたハルを思うと、時間ばかりが気になっている。時計を確認してみると、すでに二時を過ぎていた。そろそろ閉店も近いんじゃないんだろうか。 「森下、なんか変じゃない?」 「変? 」 「途中から上の空ー」 「そんなことないよー」 席に戻ってそわそわしていると、ふらふら帰って来た高槁くんが隣に座った。 お手洗いの場所も分からなくなるほど酔ってるくせに、そういうところは鋭いんだから。 「楽しくない?」 「すごく楽しい!」 「途中まではねー」 「うん、途中まで……あれ?」 「誘導尋問成功ー。いくつになっても単純な奴」 いたずらっ子のように八重歯を見せて、得意気に笑っている彼の人を気づかう性格は、アルコールの匂いにまみれても変わらない。 ……誘導尋問なんてちょっとずるい。 「じゃあ質問ー」 「なーに?」 「今日の電話の相手は彼氏ー?」 「あ、と……上司ですよー」 「ふーん。上司、ねぇ……」 「なに?」 「別にー。よっぽど怒られでもしたか」 「ちょっとだけね」 「今は気にするな。ほら、楽しめ! 飲め! 」 うん、そうだ。ハルには明日一番に連絡して、ちゃんとごめんなさいしよう。 「あ、こら! まだ寝るのは早いぞ!」 あ、また一人潰れちゃった。 *←→# |