◆
「そろそろ出るか」
レストランを後にして、手を引きながら歩いていると、急に愛姫が立ち止まった。
「あの、晴……哉?」
「あ?」
「ちゃんと言っておきたくて」
───……なんだ?
「ありがとうございます……」
「は?」
「好……き……だって、伝えてくれて……」
「あー……」
「好き、大好きです……一緒にいたいです……」
それは突然の愛姫からの告白だった。あのレストランでのことは、無理に言わせてしまったようにも思えたが、これは違う。たぶん勇気を出してのことだろう。
さっきは心臓が壊れるほどに苦しかったが、今は不思議と落ち着いて受け入れられた。
繋がっている手を引っ張り、愛姫を抱きしめる。
「安心しろ。言っただろ? 手放してやんねぇって。お前がそれを望むんなら、なおさらだ」
そう告げると愛姫は、俺の背中に腕を回し、この短時間で、もう何度目かも分からない涙を溢れさせた。
そうだ、手放せるはずがない。
自分以外の誰かをこんなにも好きになり、その気持ちを教えてくれたコイツを……
俺の中に入り込んでしまっている愛姫を、どうやったら追い出せるのかなんてことを、俺は知らないし知りたいとも思わない。
やっと俺のものになった愛姫の心を、自ら捨てるという馬鹿な行為はしねぇ。
そしてお前を選んだことに、
───俺は一生後悔なんてしない───
FIN.
→後書き*オマケ
*←
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!