12 ◆ 「そろそろ出るか」 レストランを後にして、手を引きながら歩いていると、急に愛姫が立ち止まった。 「あの、晴……哉?」 「あ?」 「ちゃんと言っておきたくて」 ───……なんだ? 「ありがとうございます……」 「は?」 「好……き……だって、伝えてくれて……」 「あー……」 「好き、大好きです……一緒にいたいです……」 それは突然の愛姫からの告白だった。あのレストランでのことは、無理に言わせてしまったようにも思えたが、これは違う。たぶん勇気を出してのことだろう。 さっきは心臓が壊れるほどに苦しかったが、今は不思議と落ち着いて受け入れられた。 繋がっている手を引っ張り、愛姫を抱きしめる。 「安心しろ。言っただろ? 手放してやんねぇって。お前がそれを望むんなら、なおさらだ」 そう告げると愛姫は、俺の背中に腕を回し、この短時間で、もう何度目かも分からない涙を溢れさせた。 そうだ、手放せるはずがない。 自分以外の誰かをこんなにも好きになり、その気持ちを教えてくれたコイツを…… 俺の中に入り込んでしまっている愛姫を、どうやったら追い出せるのかなんてことを、俺は知らないし知りたいとも思わない。 やっと俺のものになった愛姫の心を、自ら捨てるという馬鹿な行為はしねぇ。 そしてお前を選んだことに、 ───俺は一生後悔なんてしない─── FIN. →後書き*オマケ *← |