04 「あの……」 苛立ちを抑えながら待つこと数分、やっと口を開いた。 「あ、あたし……その、そういうのってよく分からなくて……」 「あ?」 「今のもしかして……こ、こくは……く、で、しょ……か……?」 ふざけんな。テメェどこまで鈍いんだ。 「そりゃそうだろ。他にどんな解釈ができるんだ」 そしてまた黙りこんだ後、少しずつ後ずさり始めた。どうしたんだ。近づいてみれば、 「や、あ、あの……」 ああ……これはやっと少し伝わったってことか? 突然顔を真っ赤に染めて目をそらし、俺が一歩前に進むと、森下はまた一歩後ろに下がる。少しずつ近づいていき、森下が壁に背中をぶつけ止まった。そりゃそうなるよな。 そして森下の両側に手をつき、逃げられない状況をつくる。 「これ以上は逃がさねーよ」 にっこり笑ってその丸い目を見つめると、しばらく何とかして抜け出そうとしていたが、観念したかのようにおとなしくなった。 ……そうなると分かった上での行動だが、俺も性格悪いな。 「あたし……こんなこと初めてで……」 「うん?」 「す、き、とか言……われたの……ない、んです……」 ああ。 「何てこ、こ、答えたらい、い、のか……」 「おい、俺はお前がどんだけの経験をしていようがしてまいが、そんなことは関係ねーんだよ」 体をビクリと震わせる森下にさらに続ける。 「俺のこと嫌いか?」 下を向きブンブンと首を振る。 瞳は固く閉じたまま。 へぇ…… 嫌いではないのか。 「でも、好きかどうかも分からない」 予想通りに今度は何度も首を縦に振る。 ふーん、そうか。だったら答えは一つだろ。森下が答えを出さねぇんじゃ俺が出すしかねぇ。 「よし分かった」 その声に安心したのかゆっくりと顔を上げ、困り果てていたその表情が、ホッとしたように緩んだ。 甘いな。逃がさねぇって言っただろ? *←→# |