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「ごめんなさい」
「……何が」
「……だってハル苦しかったのに」
「あ……? 分かるように言えよ」
「思っちゃったんだもん。嬉しかったの……」
「は?」
「だから……頼ってくれたこと」

ここまで言ってから、恐る恐る目を開けてみた。
怒鳴りつけられるか、それとも低い声で静かに怒りの言葉を聞くことになると思ってた。誰もが黙り込んじゃう、あの目線を向けられているんじゃないのかと……
だけどハルは、意味が分からないというような顔で首を傾げている。

「あ? 誰が誰を頼ったって?」
「……え? だから、昨日ハルが……」
「俺が誰に頼るんだよ。田中にか? あれはあいつが勝手に動いただけだ。放っとけっつったんだよ、俺は。あんな奴に自ら貸しをつくるわけねぇだろうが」
「違うよ! そうじゃくて……言った……でしょ?」
「何の話だ」
「そばにいろ」
「あ?」
「何度もハルが言ったから……」

寂しそうに何度も何度もそう言ったから、と続けると、ハルの目が、いつもよりも大きく広がった。

「……俺がそう言ったのか? お前に?」

ばっと起き上がり、信じられないとでも言うように、何度も確認された。
本当だと告げると、ハルの顔が、ふいっと横を向いた。
―――忘れろ。そう言って逸らされた顔。

「それで? お前が落ち込んでる理由を言え」
「……」
「愛姫」
「だから、そう言われて、頼られてるのかもしれない……甘えてるのかも……って思うと、すごく嬉しかったの……だから、だからごめんなさい……」
「それを知られたくなかったのか」

溜め息のように重く吐き出された空気と言葉に、体が揺れた。
ずるいことを考えていたことまで、簡単に見破られてしまった。

「……それに可愛いってことも……ちょっとだけ思っちゃった……」

どうせばれてしまうからと、思っていたことを正直に言って、もう一度謝った。ハルの顔は見ることができなくて、目は伏せてしまったけれど。

言ってしまったことに反応がなくて、また怖くなった。
……やっぱり怒らせてしまった。怒鳴られるぐらいならいい。だけど、嫌われちゃったらどうしよう。

「おい、別に何を思おうがどうでもいいけどな、俺が口走ったのは意識がはっきりしてなかったせいで、甘えたわけじゃねぇ。あと可愛いっつったな、お前。俺に向かって二度とそんな言葉を使えねぇようにしてやるから、昨夜見たこと聞いたことは、全部忘れろ」

―――あ、れ……?




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