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02


「何でこんな簡単な資料作りもまともにできてねぇんだ!」
「……ごめんなさい……」
「お前の脳に反省という言葉はインプットされてんのか?」
「ご……め……なさ……」
「明日の会議に間にあうようにさっさと作り直せ!」
「……は……い……」

足を引っ張るなと念じていたが、こういう時こそ失敗する奴がいた。
勤務時間終了がせまっていた時刻に、俺の怒鳴り声が響き渡り、静まり返る社員達。
失敗した女がデスクに戻ると、何人かの社員達が心配そうに声をかけに行く。

「大丈夫? あんな怒鳴んなくてもいいのにねぇ」
「あー……泣くなよ。ほら、俺らも手伝うからやり直そう」

励ましの声と、ポンと肩に乗せられた手。

「恐いよなあ部長。あんま落ち込むなよ」

全部聞こえてんだよ。

「優しく励ますのは結構なことだが……自分達の仕事は終わったのか?」
「まだです……」
「だったら無駄に喋ってんじゃねぇ! さっさと戻って片付けろ! 」
「「「ハイッ!!」」」

泣いている女……愛姫から離れていく。

甘いんだよボケ。気安く触んなカス共。







「お疲れさまでしたー」

次々と帰っていく社員達。俺も立ち上がり出ていこうとした時、田中が声をかけてきた。

「手伝ってやんねーの?」
「ほっとけ」
「皆の前であんなに怒鳴って、しかも一人で残業かよ。相変わらず鬼だねぇ……愛姫ちゃんかーわいそ」
「いいんだよ。自業自得だろ」
「手伝わないと絶対間に合わない」
「その時はその時だ。甘やかしてどうする」
「冷てーの」
「うるせーな! ほっとけっつってんだろ!!」

可哀想だとは思うが特別扱いはできねぇ。俺の立場上、えこひいきはマズイだろが。ただし……




こいつらの前では……だけどな。

「かわいそうじゃん。手伝ってやれよー」

ああ、分かってるよ。

「戻ってやんねーの?」

何も言わずに、戻る素振りも見せない俺に、しつこく言っていた田中が、足を止めた。

「おい」
「俺が戻って手伝う」

クルリと後ろを向き歩きだした。

は? 冗談じゃねー!!

「殺すぞテメェふざけんな!」

慌てて追いかけて肩を掴みながら言い、顔を覗きこんでみると、してやったりと笑った田中の顔。

「じゃ、そういうことで。残業頑張れよー」

やられた…… この俺があんな手に引っかかるとは、自分の馬鹿さ加減にウンザリするがそれよりも。

「じゃーな。愛姫ちゃんによろしく言っといて」

と、ひらひらと手を振り帰るこの男。ふざけんな。腐れ野郎が死ねボケカス。




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