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ごめんね(京天)
京天
剣城視点
「ごめん、ごめんね剣城、ごめんなさい。」
突然隣でわっと泣き出し、顔を両手で覆って謝り始めた松風を前にして、俺は戸惑いを隠すことが出来なかった。
だって、今までどんなに辛いことや悲しいことがあっても泣き言ひとつ言わなかった松風が、本当に突然何の前触れもなく泣きわめいたら誰だって驚くだろう?
おい、大丈夫か?そう声を掛けるのも忘れ、ただ泣き崩れる松風を見ていることしか出来ない俺を他所に、松風は続ける。
「俺、剣城には幸せになって欲しい。だって好きだから、大好きだから。」
嗚咽混じりに松風はそう言った。
本当に一体どうしたって言うんだ。
俺だって松風が好きだ、愛してる。
だからこそ松風には笑っていて欲しいし、幸せになって欲しい。
なぁ、お互い隠し事は無しにしようって言ったよな?
何か不満があるのなら言えばいい。
そうだろ?
「違う、不満なんかこれっぽっちもないよ。俺は剣城の側に居れてとっても幸せなんだ。でも、それじゃあ剣城は一生幸せになれないよ。」
蒼い綺麗な瞳から涙を溢し、ぽそぽそと呟く松風の言葉が信じられなくて目を見開く。
お前、何言ってんだ。
それ以上言ったら本気で怒るぞ。
無言でそう圧力を掛ければ、松風は続きを言おうと開いた口を慌てて閉じた。
「松風。」
普段よりも低い声で名前を呼ぶと、びくりと松風の肩が跳ねた。
そして気まずい沈黙が訪れる。
その間俺はずっと松風を正面から見詰めていたが、彼は俯いたまま俺と目を合わせようとはしなかった。
「なぁ松風。…お前は、俺が嫌いか?」
「……うんん。」
「…俺から離れたいか?」
「そんなことない、ずっと一緒に居たいよ。」
「なら、それでいいじゃねぇか。」
「っ駄目、駄目だよ…!きっと剣城にはもっと素敵な人が居る!俺なんかより、もっと…っ!」
だから、と続けようとした松風の腕をすかさず掴み、ぐいと引き寄せた。
いきなりの出来事に呆気にとられる松風をすっぽりと腕の中に納め、ふるふると震える小さな身体を力一杯抱き締めた。
「っ剣城…?」
痛いよ、離して。
涙声で松風が言うが俺は聞き入れなかった。
「俺は、松風天馬がいいんだ。」
松風を抱き締めたまま言えば、松風は又涙をぽろぽろ溢しながら本当に俺でいいの?
小さな声でそう呟いた。
俺は笑ってそんなこと聞くまでもないだろって頭を撫でてやる。
それに釣られ、松風も泣きすぎて真っ赤になった瞳を細めてへにゃりと笑った。
「剣城、ありがとう。俺今すっごく嬉しい。」
すっと松風が俺の背中に手を回す。
そしてそっと触れるだけの、優しい口付けを交わした。
「 」
その後に松風が何かを呟いたけれど、俺には聞き取る事が出来なかった。
「女の子じゃなくて、ごめんね。」
END
後書き
本当はバンガゼで書こうとしたんですが、無理だったので京天で書きました。
相変わらずぐだぐだ。
ってかうちの天馬くんって謝ってばっかですね。
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