幻愛夜想曲 6 美猪はこの四人の先輩と出会うまで、自分の能力の一切を知らなかった。 しかしそれから2ヶ月しか経っていない今、当然全ての能力を把握しきれている訳ではないのだが。 (…入学してから随分日常が変わったな) 人々を襲う“凶徒”という存在、そしてそれらを倒す人々によって守られていたこと、普通に生活していたそれまでとは全く縁のない事実だ。 (不思議…だな) 四人の先輩に連れられて初めて凶徒を目にした時、無意識のうちに知らない言葉が口を次いで出てきた。 今は思った通りの効果が出るようになったのだが、未だに言葉の意味が分からない。 (なんだろう。英語とはすごくかけ離れているし…) 自分で何を言っているかが分からないなんておかしな話だ。 「美猪」 話が終わったのか、いつの間にか隣に霧夜先輩がいた。 綺麗な顔だな、と見とれていたら不意に顎を優しく持ち上げられる。 「っ…」 「そんな可愛い顔で見つめないで」 食べちゃうぞ、と悪戯っぽく笑う霧夜に顔が熱くなった。 . [*前へ][次へ#] |