誘惑のチョコレート
1.
「ユウヤ、これやる」
「あ?何この袋…って、チロル?」
放課後居残っていた教室。
机の上に置かれた透明のビニール袋。
その中には三十個以上の多種多様なチロルが入っていた。
「お前甘いモン好きだったよな?」
チロル入りの袋を差し出してきたヨシカズが俺に尋ねながらニヤリと笑んだ。
「好きだけど、何でチロルがこんなに…」
「昨日ゲーセンで取ったやつのおすそ分け。俺も甘いの好きだけど、んな大量に食えねぇし」
「お前どんだけ取ったんだぁ?俺だってこんなに食い切れねぇよ」
一人では食べ切れないだろうそれを指差しながらいらないと目で訴えかける。
「そう言わずに貰って!な?」
しかし、ヨシカズの何故か必死な様子に俺は根負けしてしまった。
「…ったく……しょうがねぇか」
まぁ…タダなら貰っておくか、というセコい考えが働いたのも確かだが。
「サンキュ!マジ、助かったわ。じゃあ俺もう帰るし。また明日」
「あー?ばいばーい」
やけにあっさりと帰ってしまったヨシカズを複雑な目で見送る。
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