誘惑のチョコレート 2. 「ミルクにビスケットにきなこもち…ってこれ期間限定のじゃん。あとは…コーヒーは嫌いだから姉貴にやろう。つか、まだあんのかよ!」 袋の中身を一通り確認していると奥底に埋もれたメモを見付けた。 そこに記された少しいびつな字は紛れも無くヨシカズのもので。 「…!!?………あの、バカ…」 書かれていた内容に思わず赤面してしまう。 『今日は何の日でしょーか?』 あまりにも自分とは縁が無さ過ぎてすっかり忘れていた。 『正解はバレンタインデーです』 二月十四日。 他の国はどうだか知らないが日本では俗に女たちが男にチョコレートをあげる日。 そして、愛を告げる日。 『俺がチロルあげた意味、わかるよな?』 『お前が好きだ』 『答えは一ヶ月後まで待ってやる。』 『だから、3倍返しでよろしく!』 執行猶予は一ヶ月。 つまり三月十四日のホワイトデー。 来月の今日、俺がどんな答えを出しているかなんて知らないが、これから先も俺の隣にはヨシカズがいると思う。 何となくそんな気がする。 どう偽っても俺はヨシカズが嫌いじゃない所か、寧ろ好きだ。 しかも、友達としての"好き"が恋人としてのそれに変わらないこともないと…思ってしまっていたりして。 「とりあえず…これの3倍はキツイだろーな」 机の上に積まれた四角い塊たちを見下ろして、俺は人知れず口許を綻ばせた。 [END] [*前へ][次へ#] |