温度差。 call あ、また。 ポケットに入れた携帯が振動する。 「どうしました?」 足を止めたボクに末宮君が訊く。 何でもないよ。と返してボクはまた歩いた。 あの日以来、ボクは慧との連絡を一切絶ってる。 何回もメールが来たけど。 何度も電話が来たけど。 ボクは一度も応じなかった。 (もうニ週間も経ってるのに) 諦めると思った。 怒って呆れて、そのうち忘れる。 なんの後腐れなく別れられる。 セフレなんてそういうもんだと思ってた。 ボクはメールの中身も、残された伝言も知らない。 見たら逢いたくなるから。 声を聴いたら諦められなくなりそうだから。 だからボクは自分に約束した。 慧を忘れられるまで、慧からの連絡を一切見聞きしないって。 [*←back][next→#] |