温度差。
ケンカ?
あの日。
寮に帰ると、まだ朝早くなのに部屋が暖かくしてあって、心配そうな顔をした学人がベッドに座っていた。
「――何があったんだ?」
「……何も」
「ないわけないだろ?」
泣いてるじゃないか。と学人が問詰める。
「…ちょっと慧とケンカしちゃっただけだよ」
「ケンカ?」
学人が訝しげにボクを見てる。
「………ぁ」
学人の視線の先にあるものに気付いて、ボクは隠すように手首を袖に引っ込める。
(慧が掴んでたとこ…)
ボクの手首には、青い痣が出来ていた。
「本当にただのケンカ?」
ボクは何も言わないでこくこくと頷く。
身体はふらついてるし、コートで隠れてる中の服はぐちゃぐちゃになってる。
「………わかった」
ただのケンカじゃないことなんて、きっと学人は気付いてる。
それでも今は、深くは問わない学人の優しさが嬉しかった。
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