温度差。
サヨナラ
明け方、指先が痛くなるほどの寒さの中ボクは慧の部屋を出た。
「……」
マンションの外に出て慧の部屋を見上げてたら、ポケットの中の携帯が鳴った。
画面には慧の名前。
ボクは少し躊躇ったけど、通話ボタンを押して耳に当てた。
『幹也!? お前ドコ行った!?』
電話越しの慧はすごく慌ててる。
「……慧の部屋のベランダが見える」
そう言ったら、バタバタうるさい音がしてベランダに慧が出て来た。
『そこにいんのそうか!?』
5階からだから顔までは区別が付かないんだろう。乗り出す様にして慧が訊いてくる。
そんなに乗り出したら危ないよ。
『幹也ゴメンっ! 俺酷い事し――』
「別にいいよ。最後だし、…あれくらい」
謝ろうとした慧を遮るようにボクは告げた。
『何………最後って』
慧が訊き返してきた。
「慧」
慧。あのね、
ボク、ずっと思ってたコトがあるんだ。
慧とするのは気持ちいいから好き。
でもね、身体は気持ちいいのに、心が気持ち良くないんだ。
慧とするたびに、逢うたびに、悲しい気持ちの方が大きくなっていくんだ。
だから、終わりにしよう?
「サヨナラしよう?」
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